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F1界に革命を起こす日本人が登場。
ルノーの技術部門を支える徳永直紀。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byPanoramiC/AFLO

posted2011/05/21 08:00

F1界に革命を起こす日本人が登場。ルノーの技術部門を支える徳永直紀。<Number Web> photograph by PanoramiC/AFLO

日産時代にはスカイラインGT-Rのシステムも担当していた徳永直紀。まだまだ他にも開発中の新システムがあるそうなので楽しみだ

 一人の日本人エンジニアが、第3戦中国GPで開かれたFIA(国際自動車連盟)の公式記者会見に出席した。

 そのエンジニアの名前は徳永直紀。

 この会見に出席する者はドライバーかチームの主要人物である。同席したのはフェラーリのテクニカルディレクターであるアルド・コスタ。そしてマクラーレンのテクニカルディレクターを務めるパディ・ロウら、そうそうたるメンバーである。

 かつてホンダやトヨタ、スーパーアグリなどの日本チーム、あるいはブリヂストンなど日本企業が参戦していたころは、日本人が何度か会見に出たことはあるが、外国のチームに所属する日本人がFIAの会見に選出されたという記憶は、ない。

 なぜ、徳永が会見に呼ばれたのか。それは現在、彼がルノーの技術部門でナンバー2ともいえる副テクニカルディレクターを務めているからである。

 徳永はF1のエンジニアになる以前、日産でモータースポーツ活動を行っていた。

 転機は1999年。ルノーが日産と資本提携を結んだときだった。翌年の2000年、日産を買収したルノーが今度はベネトンを買収してF1に進出したのである。そして、ベネトンからルノーを通して日産側に「だれかF1に興味があるスタッフはいないか」と打診があり、徳永に白羽の矢が立った。

第一の革命は革新的なローンチシステムの開発だった。

 ルノー入りした徳永は、その後F1界にある革命を起こした。

 最初の革命はローンチシステム。スタート時の発進システムである。徳永がルノーに加入した当時、F1はトラクションコントロールが復活し始めたころだった。トラクションコントロールとは、電子制御でタイヤの空転を抑え、効率的に駆動力を発揮するシステムで、このシステムを応用して開発されたのがスタート時にタイヤの空転を抑え、ロスのない発進を行えるというローンチシステムだった。

 そして、この分野の開発でF1界をリードしていたのがルノーであり、そこで開発を統括していたのが徳永だったのである。

【次ページ】 「ルノーにはスタートで勝てない」と言わしめた実力。

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