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高校選抜大会の開催を、
後押しした一通のメール。
~高体連テニス部長に聞くその背景~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byMannys Photography

posted2011/04/13 06:00

高校選抜大会の開催を、後押しした一通のメール。~高体連テニス部長に聞くその背景~<Number Web> photograph by Mannys Photography

会場の博多の森テニス競技場には、出場校の選手たちからの応援メッセージが掲げられた

 3月に開催が予定されていた柔道や卓球など全国高校選抜大会は東日本大震災で軒並み中止となったが、テニスは開催に踏み切った。開催に至る経緯を全国高体連の馬瀬隆彦テニス部長に聞いた。

 大会実行委員会が「開催の方向でいく」と決めたのは震災から3日後の3月14日。出場校に連絡すると、男女各48校のうち、出場辞退を伝えてきたのは、男子の東陵(宮城)と女子の日本大学東北(福島)の2校だけで、他校は出場の意思を示した。出場チームの全選手、監督の無事も確認できたことで、大会は開催に向けて動き出した。

 ただ、高体連の他の競技は次々中止を決めていた。一度は開催と発表した体操、新体操も結局、中止。「やめるべきなのか」。馬瀬部長の気持ちは揺れ動いた。

 そこに、出場を辞退した日大東北のテニス部員からメールが届いた。校舎が損傷し、学校は無期限の休校。もちろん練習もできない。その中でテニス部員たちは「今できることをやろう」「心をひとつにして次の目標に向けて前向きに頑張ろう」と確認しあった、と書かれていた。また、その部員は、出場選手に向けて、「今テニスができることに感謝」し、「全力を尽くしベストな試合をしてください」と書いてきた。

「これが私の気持ちを後押ししてくれた」と馬瀬部長。メールの一節「今、心をひとつに」が大会のスローガンになった。個人戦は中止で団体戦のみ、日程を1日短縮しての開催となった。

大会会場に掲げられた旗には被災者へのメッセージが書き込まれた。

 東北からは男子の福島東と女子の盛岡第一(岩手)など5校が出場。選手たちは喪章をつけてプレーした。被災地への義援金も集められ、会場に掲げられたフラッグには選手たちが被災者への応援メッセージを書き込んだ。開催への反対意見は、メールで1通あっただけだという。

 参加した選手たちは、それぞれに得たもの、感じたことがあっただろう。開催は英断だったと思う。

 ただ、馬瀬部長の胸中は複雑だ。「周りは、大会をやってよかったと言ってくれるが私個人としては、その言葉が出てこない。そう言ってはいけないと思っている」。東北には今もギリギリの生活を送っている高校生たちがいる。被災地に思いをはせる馬瀬部長の言葉が重く響く。

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