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イチロー引退会見で読み取れた、
番記者たちの“地獄”と信頼関係。
photograph by
Naoya Sanuki
20歳の選手に課された“宿題”。
そういえば同じく引退を伝える翌日のスポニチには「'93年~'94年オリックス担当」記者の'94年の回想があった。ある日、イチローの打撃フォームに違和感があったので「打ち方変えたの?」と聞くと、
《「どこが変わったのか考えてください」と、イチローから宿題を課された。》(スポニチ・3月23日)
よーく考えぬいて数日後に「右足の使い方がこれまでと違うよね」と記者が答えると、イチローは「本当は去年もこの打ち方をしていた時があったんですよ」と返してきたという。
このやりとりから、右足を時計の振り子のように使う打撃フォームのことを記事にしたら「振り子打法の名付け親」と記者は言われるようになった。
当時20歳の選手から課された“宿題”に対して必死に記者が答えた結果である。イチローと番記者の問答のようなやりとりの日々が目に浮かぶ。イチロー番ってすごいなぁ……。
私はこれらのエピソードが載った紙面を読んでいたら、あの引退会見をもう一度検証してみたくなった。
「?」な質問を並べてみると。
約90分に及んだあの会見。途中「?」と思う質問もちらほらあったのを思い出したからだ。普段イチローを取材していないマスコミも参加していたからだろう。
つまりイチローと対峙してきた記者とそうでない人の質問が混ざり合う。そんな混沌の90分だったのである。野次馬心がムクムクと起きだし、再び会見を見てみた。
するとある特徴がわかった。私が「?」と感じた質問をいくつか並べてみる。
「開幕シリーズを大きなギフトとおっしゃっていたが、私たちのほうが大きなギフトをもらった。これからどんなギフトをくれるのか」
「生き様でファンに伝えられたこと、伝わったら嬉しいと思うことは」
「現役時代に我慢したこと、我慢したものは」
これら、ふんわり大まかな質問をしていたのはテレビ局の人だった。
これからどんなギフトをくれるのかって一体何を聞いているのだろう。イチローの無駄遣いに思える。
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