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イチロー引退会見で読み取れた、
番記者たちの“地獄”と信頼関係。
photograph by
Naoya Sanuki
「人生訓」を引き出したいから。
ただ、テレビ局にも言い分もあるはず。ワイドショーなどの視聴者は全員が野球に興味があるわけではない。なのでいかにイチローから「人生訓」「いい話」を引き出すかが勝負なのだと思う。それが仕事だと最初から割り切っていたはずだ。
あと、冗舌なイチローからいい話を引き出したい。自分の質問を認められたい。そんな空気も画面越しに伝わってきた。時にはその張り切り方が空回りする瞬間もあった。
会見で最も悲惨だったのは某週刊誌記者の質問だった。「メジャーデビューもアスレチックス戦で、あのときの投手は……」と語りだしたはいいがイチローに投手名の違いを指摘される。ああ……。
結局そのあと「今日の打席で1年目のゲームを思い出したりしたか」と問うとイチローは、
「長い質問に対して大変失礼なんですけど、ないですね」
とあっさり。
おそらくこの記者の頭の中には最初から「デビュー戦と同じアスレチックス戦で引退を迎えたイチロー。彼の目には19年前のあの日がよみがえっていた……」というような原稿ができあがっていたのだろう。
さらに言えば、決して知識をひけらかそうとしたのではなく、イチローに「お、この人詳しいな」と思ってほしかったに違いない。その気持ちは理解できる。
「集中力切れてるんじゃない?」
しかし、かつての番記者が《想定通りにやりとりが進んだことなんてなかった。》(デイリー・3月22日)と振り返ったように安易な質問が返り討ちにあった瞬間だった。背伸びはいかん。見てるこっちも妙に勉強になった会見でした。
会見が90分近くになり、質問はあと2問となったとき「デイリースポーツの小林です」という声がした。
質問は「野球人生を振り返って誇れることは?」
するとイチローは、
「先ほど、お話ししましたよね。小林くんも集中力切れてるんじゃない? 完全にその話、したよね」
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