この特集を組んだのは1980年。ちょうど「Number」創刊の年でした。
当時、大相撲は年間を通して殆ど満員御礼というブームの最中にありました。
現・貴乃花親方の父である初代・貴ノ花が群を抜いた人気を誇りつつも、
ウルフこと千代の富士が次代のスター力士として急成長している時代でした。
――30年が経った2011年。ふたたび日本中を騒然とさせている八百長問題。
わたしたちは、この記事に再び陽の目を当てるべきだと考えました。
ウェブにしては長文なのですが……それだけに読み応え充分です。
大相撲の八百長。古くて新しい難問に対する一つの考え方がここにあります。
「“内部告発”を続ける某週刊誌」と表紙でお伝えしたのは『週刊ポスト』誌である。
かれこれ半年にわたって続いているそのキャンペーンの要旨はこうだ。
――元十両力士で“大相撲の八百長の仕掛人であった”と称する四季の花の告発。それによると、昭和35年頃から48年まで、数多くの八百長工作を仕組んだ。例えば前の山(現高田川親方)が大関に昇進したとき、八百長工作を頼み、謝礼に200万払った。琴桜(現佐渡ヶ嶽親方)、北の富士(現九重親方)がそれぞれ横綱になったとき工作した。玉の海(死去)、清国(現伊勢ヶ浜親方)は八百長を頼まれて、ひき受けた。大横綱・大鵬も引退する直前には、優勝するために工作してくれるよう頼みにきた……等々、であるから大相撲の世界に八百長はあるのだ。天皇杯まででているスポーツに、八百長があるのはケシカラン――というもの。
当時の『週刊ポスト』(5月2日号)の誌面より。元・十両の四季の花(範雄)が八百長告白手記を載せた。タブーに切り込む衝撃的なスクープであったなかなか“衝撃的”なのだが、記事の内容もさることながら、このキャンペーンをめぐる現象には興味ある点が二つ挙げられる。
ひとつは、おそらく週刊誌が創刊されて以来、この世界では史上空前ともいっていい“全力投球的”キャンペーンにもかかわらず、他のマスコミがまったく反応を示さないという現象だ。
報道キャンペーンが始まってから約9カ月後の『週刊ポスト』(2月6日号)に載った記者座談会より。「なぜマスコミ各社が呼応しないのか」について議論されている。同様の問題としては、最近だと『週刊現代』の八百長キャンペーンが記憶に新しいこれには、当の「ポスト」誌も、いら立ち――というかややあせりにも見えるのだが――を感じているようで、NHKをはじめ、在京各新聞社運動部長あてへ、この問題に対する八百長問題に関して貴紙はどう考えるかウンヌンのアンケートを送っている。
結果はひとことでいえば、まったくかんばしくない。
つまり、黙殺された、といってもかまわない。
やっきになってセマっているのだが、腰をあげてくれないといったところが現状だ。
あるいは、これを読んだ読者が、マスコミがとりあげないのなら大衆レベルでと、大がかりなデモを相撲協会に対してかけた、という話も聞かない。
相撲ファンは決して少なくないのに、つまりは、それほどつき動かしていないのである。
興味あるもうひとつの点。半年にわたってそれなりの発行部数の週刊誌がキャンペーンをはっている事実である。一方ではその間に、現在大相撲は年六場所制なのだから、当然、場所は開かれている。にもかかわらず、相撲人気はいっこうに衰えていないどころか、ほぼ連日“満員御礼”の垂れ幕がさがるほどの盛況を見せている、という“現象”である。
「ポスト」誌の社会的地位が低いから、という答はこの際、あたっていない。
あのプロ野球の“黒い霧”事件を想いだしさえすれば十分だろう。プロ球界が大ゆれにゆれ、前途有望な若い選手が球界から追われた、あの事件にそもそも火をつけたのが、ほかならぬ「ポスト」誌だった。
相撲と野球のファン人口を比べて、前者と後者は天地ほど差がある、ということもまず絶対といっていいほどいえない。
TVの相撲番組の視聴率が雄弁にそれを物語っている。いや、ある意味では野球ファンより多いかもしれない。
なぜマスコミ各社は大相撲の八百長問題にふれないのか?
では、いったい同誌の表現を借りれば、「なぜに八百長告発にマスコミ各社がふれようとしないのか」、また市民的もりあがりで八百長反対の声があがらないのか。つまり“反応”しないのか。そして、相撲は相変わらず隆盛を続け、相撲ファンは黙っているのか。
「ナンバー」編集部としては――「ポスト」誌からアンケートをもらってはいないが――あえて、この問題に“反応”してみることにする。そして、大相撲の八百長とは何か、さらに大相撲とは何か、ということを考えてみたい。「八百長」を考えることによって、「国技」大相撲に新しい光を当てることができるかもしれない。
まず、大相撲に八百長――この言葉が適切であるかどうか別として――故意に負けたり勝ったりする勝負という意昧での取組みはあるかという問題。
答は、「ある」といってよいだろう。
それは、“元八百長仕掛人”の口を借りるまでもなく、相撲協会みずからが、証明している。
<次ページへ続く>
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