フランス・フットボール通信BACK NUMBER
バイエルンを世界の強豪にした男。
塀の向こう側から戻ったウリ会長。
posted2017/08/01 08:00
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph by
Phillipe Caron/L'Equipe
ウリ・ヘーネスが、過去40年間におけるバイエルン・ミュンヘンの最大の功労者のひとりであるのは論をまたない。バイエルンがレアル・マドリーやバルセロナ、マンチェスター・ユナイテッドらと並ぶヨーロッパのトップクラブとして、今日も君臨しているのはGMとして彼が辣腕を振るったからこそである。
だが、実務能力と人間性はまったく別である。後者に関しては、以前から疑問符が投げかけられていた。そして脱税による投獄から社会復帰し、バイエルンの会長に返り咲いた今、その本性がますます露わになっているという。
アレクシス・メヌージュ記者が、『フランス・フットボール』誌7月18日発売号でヘーネスの実態を分析している。メヌージュ記者が主張するように、ヘーネスは本当にどうしようもないエゴイストであるのか。
監修:田村修一
刑務所に21カ月入っていたのに、反省しなかった男。
監獄から帰還し、バイエルン・ミュンヘンの会長に再選されたウリ・ヘーネスは、古巣で思う存分気ままに振る舞っている。挑発的で傲慢、高圧的で権威主義。不人気には今や拍車がかかっているが……。
2014年6月から2016年2月まで、ウリ・ヘーネスは21カ月間を塀の中で過ごした。スイスの口座に2850万ユーロ(約37億円)の大金を隠し持ち、ドイツ国税局に申告しなかったのがその理由であった。
自由の身になったヘーネスは、大きく変わったように見えた。嫌いだったメディアへの露出が増え、インタビューにも謙虚かつ誠実に対応する。
だが、時間を経るにつれて傲慢で挑発的な、以前の伝説的なヘーネス像が徐々に表に出るようになった。昨年11月25日、97.7%という圧倒的な得票率で会長に選ばれたのは、収監が彼の人間性にまったく何の影響も与えていないことの、ひとつの証明でもあった。
疑うのであれば、今年5月11日にリヒテンシュタインでおこなわれたセミナーで、彼が何を話したかを思い起こせばいい。ちなみにこのセミナーの出演料として、彼は1万8000ユーロの小切手を受け取っている。
ヘーネスは自らの監獄行きをこう表現した。
「客観的に見て、私は司法の恩赦を受けるに値した。投獄されるべきではなく、無罪放免が妥当だった。2014年6月に控訴しなかったのは、大勢のジャーナリストたちが私の家の前に群がり続けるのを終わらせたかったからだ。近親者たちを守りたかったのが理由だ」