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サニブラウンを甦らせた女子選手。
「は? 経験のためにロンドン?」
posted2017/07/11 17:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Takashi Shimizu
「ハキーム、やったね!」
陸上の全米選手権で女子走幅跳で優勝を果たしたティアナ・バートレッタは、日本の取材陣を見ると、ガッツポーズを作りながらそう発した。
「本当によく頑張ったよね。すっごくうれしいし、誇らしい」
満面の笑顔で、弟分のサニブラウンのことを褒め称えた。
北京世界陸上、ロンドン五輪、リオ五輪で金メダリストを獲得したバートレッタは、この6カ月、陰に日向にサニブラウンを支えてきた選手の1人だ。
6月11日、オランダ北東部ヘンゲロ。
200mのレースを終えると、サニブラウンは疲れた表情で掲示板に視線を向け、ベンチに力なく座り込んだ。
直前練習でも好タイムを出していて、指導するレイナ・レイダーコーチも「楽しみにして」と言うほど状態は良かった。しかし結果は21秒10と惨敗。スタートで流れに乗れず、カーブを抜けると後半はさらに大失速。レース後は少し青ざめた表情で呆然としていた。
サニブラウンには戸惑いの表情が浮かんでいた。
レース後、すぐに言葉が見つからなかったのだろう。「(話をするのは)ダウンしてからでいいですか」と残し、サブトラックに戻っていった。
サブトラックで心配そうな表情で待っていたコーチと歩きながら、レースの反省と走れなかった
理由を話し合う。コーチの表情にも戸惑いが浮かんでいた。
「200mを走るのが久しぶりだったので、200mの走り方を忘れてしまった。スタートの技術練習や150m走などがメインで、長めの距離が少なかった。だから200mって長いなぁと思ってしまった」
確かに200mは4月14日以来、約2カ月ぶりだった。練習もシーズンに入ってからは技術的な部分に重点を置いていたことも原因だった。