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ジョコビッチの深刻な不調はなぜか。
尋常でない男の、ありきたりな理由。
posted2017/05/23 07:00
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
AFLO
ノバク・ジョコビッチが深刻な不調に陥っている。
1月に開幕戦のドーハを制したが、全豪オープン2回戦で世界ランキング117位のデニス・イストミンに敗れ、歯車が狂い始めた。アカプルコ、インディアンウェルズで気鋭の21歳(当時)、ニック・キリオスに連敗。マイアミは右ひじの故障で欠場した。
クレーシーズンのマスターズ1000大会でも調子は戻らない。モンテカルロは準々決勝で世界ランク13位のダビド・ゴファンに3セットで敗退。マドリードでは準決勝で同5位のナダルに2-6、4-6の完敗を喫した。
「ビッグイベントで準決勝の舞台に立ち、生涯のライバルと戦うことができた。こんな気分は何カ月ぶりだろう。それを味わえてよかったよ」
精一杯、前を向こうとしているのが分かるだけに、敗退後のコメントが痛々しい。昨年は年頭からマドリードまでに4勝したが、今季の優勝は一度きり。しかも、ドーハで優勝したあとは決勝の舞台にも立っていない。
マドリードの開幕前には、長年の盟友マリアン・バイダコーチやフィジオら3人がチームを離れた。
生涯グランドスラムから1年もたたずにチームが崩壊。
「ショック療法だよ」
ジョコビッチは端的に理由を明かしたが、極端な不振がチームに亀裂を招いたと見ることもできる。
コーチの交代はどの選手にもあるが、10年以上連れ添ったバイダとの離別は事態の深刻さを感じさせる。
昨年の全仏オープンで生涯グランドスラム(四大大会全制覇)を達成した時の2人のコーチのうち、ボリス・ベッカーがシーズン末に陣営を去り、今度はバイダ。我が世の春を謳歌した全仏から1年もたたないうちに、まさかのチーム崩壊だ。