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伊達公子46歳、復帰戦での喜び。
「何より1ポイントが取れました!」
posted2017/05/12 12:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Kyodo News
どん底からの再スタート――。
そんな見出しで韓国のテニスメディアに報じられたのは、かつて“アジアの星”と呼ばれた46歳のプロテニスプレーヤー伊達公子だ。
「再挑戦」と自ら称した2008年の現役復帰以降、30代後半から40代の体を限界スレスレのレベルで酷使してきた伊達は、昨年2月に人生初めての手術に踏み切った。左膝の半月板損傷による内視鏡手術、その2カ月後にはその半月板の縫合と、大腿骨と脛骨の軟骨損傷による骨軟骨移植手術。車椅子生活からリハビリを経て、先週の水曜日に岐阜で約1年4カ月ぶりの公式戦に戻って来た伊達は、2日後には韓国の昌原(チャンウォン)へ飛んだ。賞金総額2万5000ドルの大会に予選から出場するためだった。
早ければ、岐阜での復帰戦が引退を決める場所になるかもしれないという覚悟を抱いていた。しかし、その1回戦で世界ランク136位の23歳ジュ・リン(中国)に2-6、2-6で敗れながら、「この試合で可能性を感じるのか、挫折を感じるのか、引退を迷うくらいのものを感じてもおかしくなかった中で、可能性のほうを感じることができた」という伊達は、自分にゴーサインを出したのだ。
審判もいなければ、ボールパーソンもいない大会!?
伊達は1年以上のブランクによってランキングポイントが全て失効している。予選とはいえ韓国の大会にノーランキングで入れたのは幸運だったが、何しろ小さな町の小さな大会だ。
ワイルドカードで本戦出場となった賞金総額8万ドルの岐阜での大会は、2800人収容のセンターコートに立ち見客も出るほどの賑わいだったが、昌原では韓国の記者が送ってくれた動画を見る限り、観客などほとんど見当たらなかった。
岐阜に詰めかけたような大勢の報道陣もいなかった。
それどころか、審判もいなければ、ボールパーソンもいない!
まさに「どん底からの~」という表現がふさわしかった。