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1番人気が3年連続で崩れた桜花賞。
ソウルスターリングはなぜ負けたのか。
posted2017/04/10 11:20
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
ゴール前でこれほどスタンドが静まり返ったGIは、いつ以来だろう。
牝馬クラシックの幕開けとなった第77回桜花賞(4月9日、阪神芝外回り1600m、3歳牝馬GI)を制したのは、単勝8番人気のレーヌミノル(父ダイワメジャー、栗東・本田優厩舎)だった。ここまで4戦全勝の戦績をおさめ、単勝1.4倍の圧倒的1番人気に支持された「怪物娘」ソウルスターリング(父フランケル、美浦・藤沢和雄厩舎)は1/2馬身+首差の3着に敗れた。
ラスト200mを切ったところで、レーヌミノルが先頭に躍り出た。クリストフ・ルメールが乗るソウルスターリングは、それを外からかわしにかかる。ルメールが鞭を右手に持ち替え、2発、3発と叩いて叱咤する。
しかしソウルスターリングは、これまでライバルたちをなぎ倒してきた豪脚を見せることなく、武豊のリスグラシューにもかわされ、3着に終わった。
レーヌミノルの勝ちタイムは1分34秒5。朝方までつづいた雨のため、芝コースは重馬場でスタートしたが、午後になると稍重まで回復していた。しかし、レコードより2秒以上遅い時計が示しているように、やわらかくて掘れやすい馬場状態だった。
ディープが負けた有馬記念のような……。
レースリプレイを見ると、ワーという歓声も再生されるのだが、スタンドにいた私の耳に届いたのは、驚きと落胆の入り混じったため息ばかりだった。思い出されたのは、2005年12月25日、無敗で三冠馬となった単勝1.3倍のディープインパクトが、ハーツクライを差し切れず、初めて黒星を喫した第50回有馬記念だった。皮肉なことに、そのときハーツクライの鞍上にいたのはルメールだった。
検量室周辺では、他馬の陣営までも、ソウルスターリングの関係者に気を使って小声で話しているかのようで、重苦しい空気が漂っていた。
下馬したルメールが硬い表情で語った。
「きょうは馬場が合わなかった。レース前はリラックスして、道中もいいリズムで走っていました。でも、直線では何度も手前を替えて、反応も遅かった。勝った馬と一緒に行けなかった」