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買い手市場のJトライアウトでも……。
長らくJ1で過ごした3人の男の挑戦。
posted2016/12/14 08:00
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Kyodo News
観客はいない。声援はなく、横断幕もないスタジアムは、初冬の寒さを際立たせる。
監督はいない。コーチもいない。戦況を改善するベンチからの指示は、一度だって聞こえてこなかった。
ピッチに立つ選手たちは、1時間ほど前に顔を合わせたばかりである。彼らはユニフォームではなく、自分で持ってきたトレーニングウェアを着ている。
勝敗が意味を持たないゲームだ。30分ハーフという中途半端な時間は、勝者と敗者を決めるために行われてはいない。
それなのに、選手たちの表情は真剣そのものなのだ。力をセーブする者はひとりもいない。無機質と言ってもいい空間で、フットボーラーとしての未来を懸けた思いがぶつかり合った。
12月8、9日に行われたこのイレギュラーなゲームは、Jリーグのトライアウトである。今シーズン限りで契約満了となるJリーガーらが、自らの存在をアピールする一発勝負の機会だ。J1、J2、J3の各クラブはもちろん、JFLやさらにその下のカテゴリーからも、強化担当者が集まっていた。
平均年齢26.3歳の104人が勝負のピッチに。
2日間で104人の選手がピッチに立った。自らの夢と情熱の行き先を求める者たちの平均年齢は、26.3歳である。全国的には名前を知られていない選手が多数を占めるなか、プロで18年を過ごしてきた大ベテランもいた。
40歳の盛田剛平である。1999年に浦和レッズでキャリアをスタートさせた彼は、J1とJ2の6つのクラブを渡り歩いてきた。'16年シーズンは加入5年目のヴァンフォーレ甲府でプレーしたが、J1残留争いを繰り広げたチームでの出場数はわずか7試合に止まった。
「チームの練習が終わってから今日まで1カ月くらい時間があったので、何だろう、ちょっとキツいな、という感じでした。(選手によって)コンディションの差があったなかで、まあ、自分の持ち味は出せたかなと思います」