Jをめぐる冒険BACK NUMBER
浦和が敷いた珍しい守備隊形の理由。
美学よりも、相手が嫌がることを。
posted2016/11/30 17:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Kiichi Matsumoto
浦和レッズの“握力”が強まっている。一発勝負の大一番で勝利をがっちりと掴み取る“握力”だ。
11月29日に行われたJリーグチャンピオンシップ決勝第1戦。PKによる1点を守りきり、鹿島アントラーズを下したあとのミックスゾーンで、森脇良太の言葉がとても印象的だった。
「いや、相手の裏をかくじゃないけど、相手の嫌がることをやろうと思っていたんです」
森脇が明かしたのは、普段とは変えた浦和の攻撃のビルドアップについてだ。
森脇、遠藤航、槙野智章で形成される浦和の3バック。攻撃を組み立てる際、その中央にボランチの阿部勇樹が下がり、両サイドの槙野と森脇を前に押し出して攻撃に参加しやすくするのが、“攻撃的”の看板を掲げる浦和本来の形。
ところがこの日の特に前半は、阿部が下がるシーンがほとんどなく、槙野と森脇の攻撃参加も控えめで、遠藤と槙野、森脇の3人でビルドアップすることが多かった。
アウェーで迎える決勝の第1戦。しかも、浦和は12日の天皇杯4回戦から16日間、公式戦を戦っていないため、試合勘への不安があった。
3バックでボールを回し、2トップに1人余らせる。
だから、慎重になったのか――。
そう訊ねたとき、返ってきたのが冒頭の森脇の言葉だった。
遠藤と阿部が並べば、鹿島の2トップのプレッシャーを浴びやすくなる。そこで、従来とはやり方を変えたというのだ。
「相手も混乱したと思いますね」と森脇が言えば、遠藤が補足するように説明する。
「3バックのままでボールを回し、鹿島の2トップに対してひとり空くようにしたんです。そこを起点にすることはある程度できたと思うし、相手はちょっと戸惑っていたと思います」