ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「本当のバロンドール」が帰ってきた。
投票者が再びジャーナリストだけに。
posted2016/11/03 11:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
フランス現地時間の10月24日に、2016年のバロンドール候補30人が「フランスフットボール」誌上で発表された。
去年までの6年間は、「フランスフットボール」誌の経営母体であるアモリグループがFIFAと共催し、「FIFA年間最優秀選手賞」と統合した「FIFAバロンドール」としてサッカー界絶対無二の個人表彰となっていた。しかし、今年はFIFAとの契約を更新せず、再び両者が別々に表彰することとなった。
それに従い形式も従来のものに戻された。すなわち候補者リストは23人から30人に増え、投票も世界各国193人のジャーナリストのみとなった。元々FIFAが運営を管轄していた各国代表監督とキャプテンは投票から外れた。
また受賞者の発表も、1月ではなく12月13日発売の「フランスフットボール」誌上でおこなわれ、事前に3人の候補者が発表されることもない。FIFAとの6年間のコラボの後に、バロンドールは再び発案者であるジャーナリストたちの手に戻ったのだった。
経営が厳しい企業側と権威と伝統を欲したFIFA。
もともとFIFAとの共催は、アモリグループ経営陣とFIFAの話し合いのもと、編集部の頭ごしにおこなわれた、という経緯がある。
雑誌の売り上げが落ち込み、経済面で苦境に落ち込んだ経営陣と、いくらFIFA年間最優秀選手賞を大々的に表彰しても、決して及ぶことのないバロンドールの権威と伝統を喉から手が出るほど欲しがったFIFA。両者の利害が一致しての、ふたつの賞の統合だった。
またバロンドールは、サッカーがこれだけ商業化した今日にあって、いち雑誌編集部が運営するには、その価値がいささか大きすぎるのもまた事実だった。
まず、賞に見合うだけの表彰式を開催できない。式に出席する受賞者のパリへの移動にしても、レアルやバルサ、ミランといった所属するクラブが、「バロンドールのためなら」と特別便をチャーターする好意に甘えていたのが現実だったのだ。