“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
小倉監督休養は“手遅れ”なのか。
楢崎正剛が吐露した名古屋の現状。
posted2016/08/26 11:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE PHOTO
8月23日、低迷を続ける名古屋グランパスは、小倉隆史監督の休養を発表した。同時に、兼務するGMの仕事もストップすることになり、クラブは今月コーチに復帰したボスコ・ジュロヴスキー氏(ストイコビッチ監督時代のヘッドコーチ)が監督代行を務めることも発表した。
事実上の解任――。
これは驚きではなく、必然の出来事だった。シーズン当初から、監督経験の無い小倉氏にGM兼監督という現場の全権を与えるリスクについて、周りからも不安視する声が上がっていた。それでもクラブは決断した。もちろん成功する可能性もあり、この決断を一概には批判は出来ない。だが、もしうまく行かなかったときのリスクマネジメントを予め講じてこなかったことが問題であった。
決断の時を何度も先延ばしにした結果、制御不能に。
「やる前からネガティブなことを考えるな」という声が聞こえて来るかもしれない。しかし、彼らは博打をやっている訳では無い。プロクラブである以上、継続的な経営をしていかなければいけないのだ。クラブを継続的に発展させるために経営、運営し、チームが勝利するためにバックアップする。当然、そこにはリスクマネジメントが必ず存在する。このリスクマネジメントこそ経営の肝であり、将来のヴィジョンにも直結する。
この将来のヴィジョンは、決して夢物語ではいけない。「優勝を目指します」、「アジア制覇を目指します」は聞こえがいいが、「じゃあダメだったときにどうするの?」が常に存在しないと、それは単なる“裏付けの無い綺麗ごと”となってしまう。
今回の名古屋の経緯を見ていくと、このリスクマネジメントがなされていたかについてどうしても疑問を感じてしまう。
小倉氏の休養タイミングは、もっと早い時点でもありえた。それがここまで遅くなったのは、表面上は芯を通したということになっているが、“次の一手”が存在しなかったことを暗に示している。そして今月1日にボスコ・ジュロヴスキー氏をチームに復帰させたことで、ようやく次善策が生まれ、決断に至った。
だが、決断の時を何度も先延ばしにした結果、チームは制御不能に陥ってしまった。