野球場に散らばった余談としてBACK NUMBER
「フクハラサン、元気にしてますか?」
米国で大活躍、元阪神・呉昇桓の仁義。
posted2016/04/22 10:40
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
AP/AFLO
伝統の“Birds on the Bat”がよく映えていた。
分厚い胸板は変わらない。
赤い帽子をかぶり、グレーのユニホームを着こなし、相変わらず打者が戸惑う独特な投球フォームで腕を振る。
昨季までの同僚、呉昇桓(オ・スンファン)の投げっぷりを見た阪神の福原忍は笑顔で言う。
「本当によく曲がってますな。向こうのボールは変化球がすごく曲がるらしいね」
日本で2年連続セーブ王に輝いた剛腕は今年からメジャーリーグのセントルイス・カージナルスに移籍した。剛腕ぶりを見せつけ、まずは勝ちパターンのセットアッパーとしての地位をつかんだ。
4月上旬のメジャーリーグ開幕直前、福原は米国で奮闘するスンファンにメッセージを届けている。
「頑張れよ!」
初陣のピッツバーグからアトランタに転戦。4月10日のブレーブス戦は5-6の7回裏にマウンドに上がった。先頭のオリベラを速球で空振り三振に抑える。そして、フラワーズには外角低めに鋭く滑るカットボールで空を切らせる。3者凡退で攻撃を断つと、直後の8回表に打線が逆転。記念すべきメジャー初勝利が舞い込んだ。
それまで小刻みに6得点を挙げていたブレーブス打線の勢いを止めたのも、勝因の1つだろう。
カージナルスの公式サイトには“The Stone Buddha/Final Boss”とニックネームが紹介されている。相変わらず、仏頂面がよく似合っていた。
野球に情熱を燃やす男たちに生まれた固い絆。
福原が同じユニホームを着て戦ったのは、わずか2年間だった。それでも、ともに野球に情熱を燃やす仲間として、いつしか固い絆が生まれていた。
阪神でプレーしていた昨季の話だ。スンファンは2年契約の最終年。ロッカールームで「アメリカに行ったら見に行くわ。飛行機代も全部、出してくれよ! もちろん、ファーストクラスで頼むよ!」と笑い飛ばしていた。もちろん、冗談だ。12月に海外カジノの問題が噴出して、阪神は残留交渉を打ち切る。あまりにあっけない幕切れでスンファンは日本を去った。