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3年連続の残留争いを戦う清武弘嗣。
取材エリアで爆発した感情と言葉。
posted2016/02/23 10:30
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
AFLO
7連敗でブンデスリーガ最下位に低迷中のハノーファーは、2月21日14位のアウクスブルクをホームに迎えた。14分にあっさり失点を許してしまっても、苦境を跳ね返すという強気を見せることなく、前半を0-1で終えた。
「失点シーンも酷かったし、とにかく前半はネガティブな状態だった。ボールを出そうとしても受け手がいなくて、外へ出すしかないというような感じで、雰囲気の悪いチームの典型みたいな状態だった」と先発出場した酒井宏樹が振り返った。
今季21試合が終了した時点で、ハノーファーの勝ち点はわずかに14点しかない。1月に監督が交代し、元ポルトガル代表の長身ストライカー、ウーゴ・アルメイダを獲得したが、チーム状態は改善しないままだ。この試合でベンチ入りした清武弘嗣は、11月に右足を骨折し手術を余儀なくされ離脱していた。清武の復帰は、暗中模索を続けるハノーファーにとっての光明だったに違いない。
ハーフタイムを終え、ピッチにハノーファーの選手が姿を見せる。フィールドプレーヤーは8人しかいない。ベンチ脇で監督の指示を受けていたアルメイダがピッチへ向かったころ、ベンチの前で清武が赤いゲームシャツを身につけていた。
今季から彼は背番号10を担っている。どんなにサッカーが変わろうとも、やはりこれは特別な背番号だ。ブンデスリーガの選手たちに比べると幾分小さい背中で、その数字が強いインパクトを放っていた。ナンバー10に寄せられた期待の大きさは、清武がピッチに登場した際のスタジアムの拍手や熱気で理解できた。
監督に告げられた無情な「蹴る」という決断。
後半が始まっても、清武がボールを触る機会はなかなか訪れない。DFラインからロングボールをけり込むシーンが続いていたからだ。それでも、清武がいることでボールを繋ぎながら崩そうとする場面が増えていく。うまく前線へボールを運べると、誰もが清武を探し、ボールを預け、そこから前進しようと試みる。とはいえ、その連係はどこかぎこちなく、ゴール前へ押し込んだ相手を崩すところまではいかず、逆にボールを奪われてしまう。
「俺の意図としては、もっと繋いで中へ入ろうと思っていた。でも途中で監督から呼ばれて『(ロングボールを)蹴るから』と言われた。監督がフランクフルトで指揮をとっていたときは、前線にマイアーというデカい選手がいたから、そういうイメージだとは思う。でも相手も引いていたし、自分の役割は繋ぐことだと考えていたから。そのあたりは難しい。もっとしっかりとチームとしてどう戦うのか、すり合せをしていかなくちゃいけない」と清武。