プロ野球PRESSBACK NUMBER
黒田博樹の「男気」に染まった広島。
後はポスト・マエケン問題だけだが……。
posted2015/12/30 12:30
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Hideki Sugiyama
Number Web版“プロ野球・ゆく年くる年”企画は、全12球団の短期集中コラムシリーズです。年末年始にかけて、全12球団の2015年の振り返りと2016年の夢を、チームへの思い入れたっぷりの筆致でお伝えいたします!
第6回目はエース前田健太がメジャーに旅立ち、黒田博樹が残留発表した、広島東洋カープです。
安心してください、続けますよ――。
'14年年末の復帰発表に続き、'15年の年末にも広島ファンを喜ばせるニュースが飛び込んできた。「黒田、現役続行」。ポスティングシステムで大リーグ移籍が濃厚な前田健太の流出を嘆くファンの「マエケン・ロス」を吹き飛ばした。広島の'15年流行語を決めるとすれば、文句なしで「男気」となるだろう。クライマックスシリーズ進出を逃したことで、より黒田色の強い1年となった。
20億円前後のオファーを蹴って帰ってきた黒田にファンは熱狂した。合流した沖縄キャンプは過去に例を見ないほどの集客で、黒田が動けば皆動く状態だった。復帰後初お披露目となったオープン戦初戦で大リーグ仕込みの技を披露。公式戦初登板も、真っ赤に染まったマツダスタジアムで初白星を挙げた。打者の手元で動くカットボールやツーシームを両サイドに投げ分ける「フロントドア」と「バックドア」は瞬く間に全国の野球ファンの間に広まった。
6月までに6勝と、大リーグの名門ヤンキースで大黒柱として信頼を集めた存在感は健在だった。だが、8年ぶりの日本でのプレーに、40歳の体は悲鳴を上げ始める。右足くるぶし付近の炎症と右肩の炎症で2度登録抹消。それでも上位進出を狙うチームで気力を振り絞った。シーズン終盤には2度、中4日で先発し、3位浮上がかかった最終戦は前回先発から中2日でブルペン待機を直訴。「最後の試合も打者1人でも行ってくれと言われれば行くつもり。少しでも力になれれば」とは、まさに男気である。
最終戦で号泣した大瀬良の来季は再び先発へ。
しかしそんなシーズンも、最後は涙で終わった。
最終戦で敗戦投手となった大瀬良大地は人目もはばからず泣いた。シーズン途中に先発から中継ぎに配置転換され、セットアッパーを務めた。手薄な中継ぎ事情もあり、複数イニング投げることもあった。慣れないポジションや登板過多により、最後は力尽きた。
だが、最後までクライマックスシリーズ進出争いに加わることができたのは、セットアッパー大瀬良がいたからだ。'15年シーズンを見れば、大瀬良の中継ぎ転向は英断だったと言わざるを得ないだろう。
ただ、'16年は再び先発に戻る。この決断もまた正しかったとなることを祈る。大黒柱の前田がポスティングシステムで大リーグ移籍が確実視される来季、大瀬良の先発再転向で再建のめどが立てられる。