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スタンドは埋まれども、盛り上がらず。
気づけばバルサが勝っていた準決勝。
posted2015/12/18 11:25
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Yoshihiro Koike
試合前、横浜国際総合競技場のプレスセンターは騒然としていた。
「広州恒大とのクラブワールドカップ準決勝の試合直前、FCバルセロナは欠場者に見舞われた。メッシは腎疝痛(じんせんつう。腎結石による腰・背中の痛み)にかかり、試合に出場できなくなった。復帰の見込みは今後の回復経過次第となる」
そんな短い声明文がクラブの公式HPに掲載されたのは、キックオフの約2時間前のことだ。スタンドの記者席で配られたメンバー表には、ネイマールとドウグラスの欄にあった「Injury(負傷)」を示す「I」とは違い、メッシの欄にだけ「Absent(欠場)」の「A」が記されていた。
腎臓病、急性腎炎、腎結石、尿管結石……。いくつかの病名がプレスセンター内を飛び交う傍ら、スタンドでは先発メンバーがアナウンスされた時点でメッシの不在を初めて知り、その理由も分からぬままキックオフを迎えたファンも多かったようだ。
だが結局メッシの欠場は、それ自体がこの日一番の話題となった一方で、圧倒的なチーム力の差が存在する2チームの対戦に大きな影響を与えることはなかった。
慎重に、無理をせずに試合を進めたバルセロナ。
「チームは至って真剣にプレーし、ミスを犯さず、ライバルが危険を作り出すチャンスを与えないよう戦った。この手の一発勝負では勝負の行方が分からなくなる展開に陥りがちだが、我々は相手のブラジル人アタッカーたちに持ち味を発揮させない、隙のない試合ができた」
試合後ルイス・エンリケが胸を張っていた通り、この日のバルサは相手に付け入る隙を与えないことを第一に考えた、極めて慎重な、言い換えれば無理をしない試合運びを貫いた。
75%という圧倒的なボール支配率を記録した一方、枠内シュートは6本、コーナーキックは4本と少なかったのも、バルサが無理に攻めようとせず、確実にポゼッションを保ちながらゲームを支配し続けることを重視していた表れだ。