錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭、準決進出は困難だが……。
「いつもワクワク」フェデラー戦へ。
posted2015/11/18 16:20
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
何回コートに立って、何度勝負を繰り返しても、そこに〈発見〉は尽きないらしい。
ATPワールドツアーファイナルに2年連続出場を果たした錦織圭は、ラウンドロビンの第2戦で世界ランク6位のトマーシュ・ベルディヒを下したあと、しみじみと言った。
「セカンドセットの2-1までほんとに自分のペースだったのに、流れが急に変わったのを感じました。ほんとに、こんなに変わるんだなって……」
第1セットを取って第2セットも第1ゲームでブレークに成功していたが、2-0から5ゲームを連取され、結局このセットを落とした展開を言っていた。そんなことは初めてではないはずだが、約3カ月ぶりのトップ10プレーヤーからの手応えある勝利に、テニスの奥深さを語る表情と言葉はどことなく初々しかった。
ただ、「数少ないチャンスを逃してしまったのは大きなミスでした」と反省した錦織も、この失セットが重くのしかかってくることをどこまで覚悟していただろうか。2日前にノバク・ジョコビッチに敗れたものの、これで2敗を免れ、ラウンドロビンの残り1試合、ロジャー・フェデラーとの一戦が大勝負になるという目算が立っていたのだ。風向きは悪くなかった――。
昨年以上に「挑戦者」になった錦織。
ここまでを少し振り返ろう。
今シーズンの成績で上位8人にのみ出場権が与えられるエリート大会。錦織にとっては2年連続の出場となる。初出場だった昨年は6番目で入ったが、今年は最後の8番目で滑り込んだ。昨年は一つ年下のミロシュ・ラオニッチがいたが、今回はいない。錦織が最年少である。8人の中でグランドスラムの優勝経験がないのは錦織だけでなくトマーシュ・ベルディヒ、ダビド・フェレールがいるが、マスターズシリーズの優勝経験もないのは錦織だけ。ツアー優勝も、10個あっても一番少ない。
昨年以上に「挑戦者」になった錦織が、ラウンドロビンで同じグループに入ったのはジョコビッチ、フェデラー、ベルディヒだ。最初の相手はジョコビッチ。強すぎる鉄人・王者に対して1-6、1-6の完敗。錦織が2ゲームしか奪えなかったのは、途中棄権を除けば約5年ぶりだった。