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元日本代表、現さいたま市議1年生。
都築龍太が語る転身の理由と「夢」。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

PROFILE

photograph byTakashi Shimizu

posted2015/06/02 10:30

元日本代表、現さいたま市議1年生。都築龍太が語る転身の理由と「夢」。<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

すっかり議員らしい姿になった都築龍太だが、話し方や表情の端々に、現役時代以来の芯の強さが見え隠れする。どんな第二の人生が彼を待ち受けているのだろうか。撮影協力:浦和ロイヤルパインズホテル

都築の転機となった「夢先生」というプロジェクト。

 選挙に落選し、情熱を向ける先を探していた都築の転機となったのは、やはり新しい“挑戦”の場だった。

 それは、日本サッカー協会が行なっている「JFAこころのプロジェクト」の「夢先生」活動だ。元日本代表やJリーガー、他競技のアスリートが先生となって、全国各地の小学校で「夢」について語る。

「55分間、子どもたちの前で話すんです。10分も話せないだろうと思ってたんですが、気がついたら1時間話していた。やっぱり、自分がやってきたことだから話せるんだなと思いました。それで、授業のあとに子どもたちから感想文が届くんですよ。それを読んで、自分の想いが伝わっていたと感じられたときは、本当に嬉しかったですね」

 子どもたちの雰囲気を察し、言い回しや言葉を変える。飽きさせないように対話形式を授業に取り込むなど、工夫を重ねた。

「数字や難しい言葉を使えば大人を納得させることはできるけれど、子どもはそうはいかない。だから独特の難しさがあります。『どう思う?』と発言を求めた子どもが答えられないと空気が悪くなるので、そういう気遣いも必要。僕が話した言葉をそのまま覚えてくれたり、子どもたちはみんな本当に真剣に聞いてくれている。だからこそやりがいもあるし、プレッシャーもあります。回を重ねて上手に話せるようになったとしても、それに慣れてしまうと逆に伝わらなくなるんですよね」

子供たちに「夢を諦めるな」と繰り返すうちに……。

 現役時代は人前で話すことが苦手だった選手が、夢先生の活動を経て話し上手になるケースも多いという。都築もその一人だった。そして彼は「夢の力」を子供たちに教えられたという。

「県議会選挙に落選してもう立候補はしないと思ったけれど、だんだん『ここで辞めたら後悔するんじゃないか』という気持ちも出てきていました。議員になるという目標を持って、頑張った。でも、落選して挫折を味わった。ここで、落ちたからもう諦めるという決断をできるのか? 子供たちを前に『夢を持ってくれ』、『夢を諦めるな』と繰り返している僕が、議員になるという夢を諦めるのはイヤだなと。それはできないだろうと思ったんです。半年間悩んで再挑戦を決めたときは、すごく気持ちが晴れました」

 自身の言葉を真剣に聞いてくれる子供たち。彼らの姿を見て、夢や目標があるから頑張ろうという向上心のエネルギーが、生きる力になることを再確認した。

【次ページ】 地元の集まりに顔を出す中で見えてきた現実。

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