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3バックのサイドと永井謙佑の速度。
システムは選手の力を生かすために。
posted2015/05/15 10:30
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
今シーズンのJ1、様々な会場を訪れて感じることがある。
3バックを採用しているチームが、明らかに増えている。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の志向が色濃い“可変システム”の浦和と広島。昨季から3バックを継続している湘南、山形、甲府。そして試合によって3バックを併用してきた川崎、柏。これらのチーム以外にも、今季は名古屋、横浜FM、神戸、清水、新潟などが3バックを採用することがある。
J1の流行といえる3バック。ただ、この布陣は決して“万能薬”ではないことも確かだ。10日に行なわれた横浜FMvs.新潟では横浜FMが3バックの布陣を敷いたのだが、前半は4バックの新潟に押し込まれる展開になった。特に1トップのアデミウソンと味方の距離感が離れ、アデミウソンが完全に孤立してしまったのだ。
横浜FMは後半から4バックに戻したことでリズムを取り戻し、結果的には1-0で勝利した。とはいえモンバエルツ監督が「守備のところでボールをなかなか奪えませんでした」と話した通り、3バックの完成度という意味では課題を残した。
永井謙佑が繰り返す、個性とシステムの試行錯誤。
3バックを機能させるためのプラスアルファ。それはシステムの中で選手の個性をどう生かすか、ということに尽きる。
現在、個性とシステムの試行錯誤を繰り返す象徴的な存在は、名古屋の永井謙佑だろう。
永井、川又堅碁、ノヴァコビッチら前線にタレントを揃える名古屋は、彼らを併用するために第5節の広島戦から3バックを主に使っている。その中で永井に与えられたポジションは左サイドハーフである。
以下は第11節、名古屋以外で3バックのサイドハーフとして先発した選手だ。
浦和:宇賀神友弥、広島:柏好文、川崎:車屋紳太郎、横浜FM:下平匠、湘南:菊池大介、神戸:高橋祥平、山形:高木利弥、清水:デューク、新潟:コルテース、甲府:阿部翔平
ほとんどの選手は4バックならサイドバック、またはサイドハーフを本職としている。一方、永井の本来のポジションはもちろんFW。攻撃志向の強いアタッカーが3バックでサイドハーフを務めるのはレアケースと言っていいだろう。左サイドから圧力をかけていきたい、という西野朗監督の狙いが強く見える。