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「安く買って高く売る」を極限まで。
セビージャの“ミダス王”モンチ。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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photograph byMarca Media/AFLO

posted2015/04/23 10:30

「安く買って高く売る」を極限まで。セビージャの“ミダス王”モンチ。<Number Web> photograph by Marca Media/AFLO

ウナイ・エメリ監督(右)と名物SD“モンチ”の信頼関係がセビージャ独自の補強計画を可能にしている。

 先日、経済ニュースサイト『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』にセビージャのスポーツディレクターを務めるラモン・ロドリゲス・ベルデホ、通称“モンチ”が「セビージャのミダス王」と紹介されていた。

 紀元前8世紀頃にフリギア(現トルコ中西部)を統治したミダスは、触れたもの全てを黄金に変える能力を授かった王として、ギリシャ神話に描かれている。

 モンチがそのミダスに例えられたのは、彼が安価で獲得してきた無名選手が、その後急激に市場価値を高め、高額の移籍金を置き土産にビッグクラブへ移籍していく例が後を絶たないからだ。

 僅か52万ユーロで獲得したダニエウ・アウベスを3600万ユーロでバルセロナへ、同250万ユーロで獲得したジュリオ・バチスタを2500万ユーロでレアル・マドリーへ売却したのはその代表格。他にもアドリアーノ・コレイア、セイドゥ・ケイタ、アルバロ・ネグレド、ジョフリー・コンドグビア、フェデリコ・ファシオ、イバン・ラキティッチらが、獲得費用の何倍もの利益を生み出してきた。

 並行してセビージャは、カンテラから台頭してきたセルヒオ・ラモス、ホセ・アントニオ・レジェス、ヘスス・ナバス、アルベルト・モレノらの引き抜きに対しても強気の態度を貫くことで、最大限の移籍金を引き出してきた。

 その結果、モンチがSDに就任した2000年夏の時点では電気代も払えない極貧状態に陥っていたクラブが、数年のうちにバレンシアやアトレティコ・マドリーと肩を並べるほどに力を付けてきたのである。

トップ選手を買うことも、留め置くこともできない。

 モンチは言う。

「我々の強みは未知の市場にある。我々が獲得するのは成長の過程にある選手だ。そしてその選手が最高のレベルに達したタイミングで売却する。資金力では他のビッグクラブに敵わない。一人の選手を獲得するのに3000万ユーロ払うこともできない。だから我々は売り手としての役割を受け入れるしかないんだ」

 トップレベルの選手を買うことも、トップレベルに成長した選手をチームにとどめておくことも難しい。そんな中堅クラブの現実を直視しているからこそ、セビージャは選手売買で生じる利鞘を最大限に引き出すことで生き延びてきたのだ。

【次ページ】 株式会社ではあるが、スポーツクラブとして勝利を。

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