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18回目で“天国”を見た杉田祐一の長き旅路。
~念願のウィンブルドン本戦出場~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2014/08/09 10:30

18回目で“天国”を見た杉田祐一の長き旅路。~念願のウィンブルドン本戦出場~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

5年目の挑戦でウィンブルドン予選を突破した杉田。本戦1回戦では接戦を演じるも敗退。

 25歳の杉田祐一がウィンブルドンで四大大会初出場を果たした。四大大会の予選は18回目の挑戦で、予選決勝進出5回目にして、ついに関門を突破した。杉田は、いかにもスッキリしたという表情で、胸の内を明かした。

「ほっとした方が大きいですね。時間がかかったので、その分……。抱えていた呪縛から解放されたというか」

 今年1月の全豪では予選決勝で敗れた。コートから引き上げるところを呼び止めると杉田は「悔しいです」とだけ言って絶句、涙をこぼした。四大大会の本戦と予選は天国と地獄ほど違う、と選手たちは言う。獲得できるポイントも雲泥の差なら、ホスピタリティもあからさまに違う。'11年全米で同年代のライバル伊藤竜馬が、'12年全米では年下の守屋宏紀が、ひと足先に四大大会初出場を果たしている。「なぜだ?」。杉田は忸怩たる思いで仲間の背中を見ていたという。なぜ彼らはあっさりハードルを越えていくのか。自分はこんなに苦労しているのに、と。

自分の弱さを受け入れたことで予選決勝を勝ち抜いた。

 もともと気持ちの作り方が上手な選手ではなかった。3年前の全日本選手権では格下選手に3回戦で敗退。記者会見で質問に答える声は小さく、最後まで自分の殻に閉じこもったままだった。敗戦の悔しさを無理矢理にでも消化し、モチベーションに変えなければツアーの連戦は戦えない。「なぜだ?」と予選の壁を越えられない不運を恨み、仲間を羨むよりも、自分と向き合い、勝てない原因を突き詰めるのが本来の姿だろう。

 彼の力があれば、もっと早く本戦に到達できたのではないか。ただ、18回という回数が彼には必要だった、とも言える。

 予選決勝では先に2セットを連取したが、第3セットはリードを守れず5-5に追いつかれた。ここから開き直って勝ち切れたのは、過去の経験があったからだろう。こうした緊迫した場面では「いつも(精神的に)引いている自分がいた」と杉田は明かす。しかしこの試合では、そんな自分の弱さから目を背けず、受け入れた。だから、冷静に「自分のできること」をやろうと思えたのだ。

 過去17回の挑戦は、自分との向き合い方を探る戦いだったのかもしれない。それにしても、こんなにも長く「地獄」をさまよいながら、よくぞくじけなかったものだと思う。

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