SCORE CARDBACK NUMBER

ウィンブルドンで感じた、“自分らしさ”の物足りなさ。
~奈良くるみvs.ビーナス戦を見て~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2014/07/10 10:00

2度目のウィンブルドン2回戦に進出した奈良は、同大会で5度優勝のビーナスに敗れた。

2度目のウィンブルドン2回戦に進出した奈良は、同大会で5度優勝のビーナスに敗れた。

 錦織圭はウィンブルドンで初の16強入りを果たしたが、奈良くるみと土居美咲は2回戦、伊藤竜馬と杉田祐一、クルム伊達公子は1回戦で敗退した。逆転負けの錦織と伊達を別にすれば、どれも似たような試合展開だった。同じようなスコアで敗れていく日本勢を見ていると、つい愚痴っぽい言葉も出てくる。「ああ、もったいないな」と。

 奈良と土居、杉田はシード選手に敗れた。伊藤を破ったシモーネ・ボレリも自己最高36位。4人とも、格上相手に健闘した。持てる力を発揮して、よく競った。それだけに、なんとかならなかったか、という思いがある。

 奈良は、この大会5度優勝のビーナス・ウィリアムズに6-7、1-6で敗れた。会見で奈良は「第1セットは100の力のうち70、80は出せた」と振り返った。一時は先行して観客を喜ばせたが、相手を動揺させるには至らなかった。ビーナスは第2セットも序盤に主導権を握り、涼しい顔でコートを去っていった。

 内容はよかったが、相手はトッププレーヤー、どこかでリスクを冒して攻める余地はなかったのか――会見でこう尋ねると、奈良は小さく頷いて答えた。

上位にひと泡吹かせようとする野心を見せてほしい。

「トップの選手は大事な所で攻めてくるが、一番(の強み)はどんな時でも自分のプレーを貫くことだと思う。自分は早い段階でエースをねらうタイプではないので、自分(本来)の、足を生かすプレーをやっていったほうがよかったと思う」

 頭のいい選手だなと思う。考え方としては間違っていない。今の奈良にとって、勝利への最短距離はその“自分らしさ”を出すことだろう。だが、どこか物足りなさも残る試合だった。

 この大会で第1シードのセリーナ・ウィリアムズを破る番狂わせを演じたのが、アリーゼ・コルネ。美人選手だが、いかにも腹に一物持っていそうに見える。自分らしく戦えればよしとするか、彼女のように野心をむき出しにして、上位にひと泡吹かせようと挑むのか。

 まじめに自分のスタイルを追求してきたからこそ今の奈良があり、土居や伊藤、杉田があるのは確かだが、この大舞台で上位に挑むのだから、何か企んでもいい。腹に一物という意味では、錦織圭、クルム伊達という素晴らしいお手本も身近にいる。

関連コラム

ページトップ