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特別扱いの終わりと、自力での一軍。
斎藤佑樹が遂に「高校時代」を超えた。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/07/18 10:30

特別扱いの終わりと、自力での一軍。斎藤佑樹が遂に「高校時代」を超えた。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

昨年は一軍での登板機会は1度のみで、勝ち星は0。長らく苦しんだ期待値と現実のギャップを乗り越え、地道に力をつけて再び一軍での活躍を目指している。

 2度目のデビュー戦。そんな風に見えた。

 7月12日、日本ハムの斎藤佑樹が今季3度目の一軍の先発マウンドに立った。

 5回1失点。勝ち星はつかなかったが、上々である。斎藤は明らかに今までの斎藤とは違う。

 兆しはあった。この春のキャンプのことだ。

「今日、コツをつかみました」

 そう確信めいて語っていたのは、2月23日のことである。事実、その日を境に見違えるように斎藤のストレートは力強くなった。

 オープン戦でも好投し、本人も「プロ入りしてからいちばん調子がいい」と手応えをつかんでいた。いやもっといえば、大学・プロを通じて初めて、高校3年夏、甲子園で全国制覇を遂げたときの自分を超えたと思えた。

直情的で短気だからこそのポーカーフェイス。

 3月29日の今季初登板は4失点で負け投手にこそなったものの、内容はよかった。何より、あんなに楽しそうに投げている斎藤を見たのは久々のことだった。

 4月10日の2戦目は立ち上がりからフォームが安定せず、2回途中、4四球目を出したところで降板させられてしまい、翌日には二軍落ちが決まった。当時この処置については、正直厳し過ぎるのではと思った。

 首脳陣は、内容以上に「気持ちが見えない」と、その理由を語った。

 ただ、そもそも斎藤は気持ちが見えないというより、極力、喜怒哀楽を表に出すまいとしている選手だ。そうしているのは元来直情的で、短気だからでもある。高校2年の途中までは、それがゆえに結果が出なかった。だからこそ、今のようにポーカーフェイスを装い、自分をコントロールする術を身につけたのだ。

 2回途中で降板した試合も淡々と振る舞ってはいたが、内心は煮えたぎっていた。

「マウンドを降りたとき、ベンチに戻ったら、グラブを投げつけ、ベンチを蹴り上げようと思ってたんです。でも(フェア)ラインをまたいで『それをやったら自分じゃなくなるな』って」

――やればいいのに。

「……やれたら楽ですけどね」

 感情を露わにする方がある意味、簡単だ。でも、それをしたら「自分に負けたことになる」と考えるのが斎藤なのだ。

【次ページ】 「僕のこと、みんな精神的に強いって思ってますよね」

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