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「メッシ対ドイツ」を超える戦いを。
決勝に相応しい個の激突が見たい。

posted2014/07/12 10:30

 
「メッシ対ドイツ」を超える戦いを。決勝に相応しい個の激突が見たい。<Number Web> photograph by Getty Images

満身創痍のアルゼンチンにとって、頼みの綱はメッシしかいない。決勝戦ではさすがに走るのか、それとも「走らずに決める」スタイルを貫くのかも見所だ。

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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 準決勝で対照的な戦いぶりを見せた2チームによる決勝戦となった。24年ぶり4度目の戴冠にリーチをかけたドイツと、28年ぶり3度目の頂点へひた走るアルゼンチンとの対戦は、7月13日午後4時(日本時間14日午前4時)、聖地マラカナンでキックオフとなる。

 両国が決勝で対戦するのは'86年メキシコ大会、'90年イタリア大会以来24年ぶり3度目となり、決勝での過去の対戦成績は1勝1敗。欧州勢が南米開催のW杯で優勝すれば初、また、南米勢のW杯優勝となれば'02年日韓大会でブラジルが優勝して以来12年ぶりだ。

 ドイツは「死の組」であるグループGを、ポルトガルに4-0、ガーナに2-2、米国に1-0と、通算2勝1分で突破。決勝トーナメント1回戦ではアルジェリアとの延長戦を2-1で乗り切り、準々決勝ではフランスに1-0で競り勝ってきた。事実上の決勝戦と言われたブラジルとの準決勝で7-1という空前絶後の大勝を演じたことによりかき消されがちだが、初戦のポルトガル戦を除けば、決して楽勝というわけではなかった。

攻撃陣、守備陣ともに好調で緻密さも備えるドイツ。

 とはいえ試合内容を見れば、躍動感としたたかさを兼ね備えた、絶頂期にあるチームらしい味わいが存分に示されている。

 今大会の2得点でW杯通算16得点とし、ロナウド(ブラジル)を抜いたミロスラフ・クローゼ、現在5得点で南アフリカW杯に続く2大会連続得点王を視野に入れるトーマス・ミュラー。彼らを中心とする攻撃陣の顔ぶれは充実一途で、コンパクトな陣形でボールを奪ってのショートカウンターから得点を量産している。

 そして、今大会で絶大なる存在感を見せているのがGKマヌエル・ノイアーだ。高い位置に設定されている最終ラインの裏までをカバーする守備範囲の広さは瞠目の域。オフサイドに関与しないスイーパーが1人加わったようでもある。さらにこれまたほれぼれとするのがつなぎの技術。中盤の選手にグラウンダーで縦に付けるパスには美しさが漂う。相手の間合いを自分のタイミングに吸収する1対1の強さはもちろんのこと、余裕のない至近距離からのシュートを長く強靱な腕で跳ね返す姿は阿修羅の如しだ。

 ブラジル戦の先制点の場面で見せた、クローゼのスクリーンプレーによるミュラーのシュートのような緻密さもあり、4年前の南アフリカW杯で最も躍動感のあるチームだったドイツは、今まさに成熟の域に達している。フランスとの準々決勝、ブラジルとの準決勝をいずれも消耗度の低い試合内容で勝ち上がってきたという体力的なアドバンテージもある。しかも、アルゼンチンと比べて試合間隔が1日多い。

【次ページ】 メッシの嘔吐を止めた、ゴールがもたらす好循環。

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