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野手転向と怪我を乗り越えた、
ヤクルト・雄平の“復活劇”。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/06/05 10:30

野手転向と怪我を乗り越えた、ヤクルト・雄平の“復活劇”。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

5月28日、対日本ハム戦の4回、大谷翔平から9号ソロを放ったヤクルト・雄平。8回にも10号ソロを放ち、“二刀流”に別れを告げた29歳は、自身初のシーズン2桁本塁打を記録した。

ヤクルトは下位、しかし光明は打撃にある。

 5月29日の日本ハム戦では4打数0安打と結果こそ残していないが、17球投じられたうち見逃したのはたった1球だけ。さかのぼって見ていくと、5月25日の楽天戦での内野安打は初球打ち、5月8日の広島戦での左前打は1ボールからの2球目、という具合に好球必打が目立つ。全力疾走も早いカウントからの好球必打も、野球ができる喜びを体全体で表現しているように私には見える。

 チームは6月1日現在、リーグ最下位に沈んでいる。これはある程度予想がついたことだが、5月は13勝11敗1分けと勝率5割を超えている。好調の原動力になっているのは打撃面で、リーグ最下位の防御率4.92にくらべ、チーム打率.291は2位阪神を2分3厘引き離す圧倒的首位である。

 打撃面の牽引役はリーグ1位の18本塁打を放つバレンティンであり、リーグ3位の43打点を挙げている畠山和洋、リーグ2位の116塁打を記録する山田哲人だが、川端慎吾(打率.310)、中村悠平(規定打席未到達も打率.364)とともに、日本人最多本塁打を放ち、打撃成績でも13位につける雄平の貢献も見逃せない。

雄平の活躍は、いかにもヤクルトらしい事態だ。

 ヤクルトはご存じのようにケガ人が多い。投手陣では由規が左スネの剥離骨折と右肩の手術の影響で過去2シーズン登板がない。館山昌平は右ヒジの手術で昨年の登板は2試合だけ。昨年新人王の小川泰弘は4月18日、阪神・鳥谷敬の打球が右手を直撃、右手有鉤骨鉤骨折で現在療養中……等々、さながら野戦病院の様相を呈している。

 過去10年、チーム成績が「2→4→3→6→5→3→4→2→3→6位」と乱高下している要因としては故障者の多さが無視できない。しかし、故障者がリハビリを経て戻ってくるというのもヤクルトというチームの伝統なのである。

 古くは岡林洋一、川崎憲次郎、川島亮が、最近では館山が'04年のトミー・ジョン手術を経て'05~'12年まで78勝を積み上げ、川端は昨年4月に右足首の手術を受けたが7月に復活、規定打席未到達ながら打率.311を記録している。

 故障からカムバックしてチームに予想外の勝ち星をもたらす――もちろん故障はしないほうがいいが、故障しても戻ってこられるサポート体制は心強い。雄平の活躍はいかにもヤクルトらしい。

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東京ヤクルトスワローズ
高井雄平

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