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田中将大、“宣伝通り”のスタート。
次に掴むべきはNYのファンの心だ。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2014/05/03 10:40

田中将大、“宣伝通り”のスタート。次に掴むべきはNYのファンの心だ。<Number Web> photograph by Getty Images

4月27日のエンゼルス戦、制球が定まらず終始硬い表情をしていた田中将大投手。ここまで5試合に登板し、3勝0敗、防御率2.27と不敗神話を継続している。

 メジャーが開幕してから1カ月が経過した。

 今なお、日米両国のメディアから注目を集め続けるヤンキースの田中将大投手だが、ここまで“期待以上”の投球を続けていると言っていい。

 つい先日のことだが、ヤンキースの試合を中継している「YESネットワーク」が田中の評価として“As Advertised(宣伝通り)”という表現をしていた。

 これまでも多くの日本人選手が注目を集めながらメジャー挑戦を果たしてきたが、メディアの過剰報道による前評判が高すぎるため、1年目からそれに見合うだけの活躍をするのは難しかった。

 もちろん田中も例外ではない。にもかかわらず、その前評判に違わぬ投球をしていることそれ自体、“期待以上”といっても決して大袈裟ではないはずだ。

野茂、ダルビッシュをも上回る安定したスタート。

 まずは、田中の4月の投球を振り返ってみよう。

<主な日本人投手の初登板から5試合目までの投球データ>
●田中将大(2014)
登板試合数 投球回数 球数 被安打 失点 自責点 与四球 奪三振 試合結果(チーム)
1試合目 7 97 6 3 2 0 8 勝ち
2試合目 7 101 7 3 3 1 10 勝敗なし(負け)
3試合目 8 107 2 0 0 1 10 勝ち
4試合目 7回1/3 105 7 2 2 0 7 勝ち
5試合目 6回1/3 108 5 2 2 4 11 勝敗なし(勝ち)
●ダルビッシュ有(2012)
登板試合数 投球回数 球数 被安打 失点 自責点 与四球 奪三振 試合結果(チーム)
1試合目 5回2/3 110 8 5 5 4 5 勝ち
2試合目 5回2/3 102 9 2 1 4 4 勝敗なし(勝ち)
3試合目 6回1/3 121 2 1 1 5 5 勝ち
4試合目 8回1/3 119 7 0 0 2 10 勝ち
5試合目 7 97 4 1 1 2 9 勝ち
●松坂大輔(2007)
登板試合数 投球回数 球数 被安打 失点 自責点 与四球 奪三振 試合結果(チーム)
1試合目 7 108 6 1 1 1 10 勝ち
2試合目 7 103 8 3 3 1 4 負け
3試合目 6 105 3 2 2 3 10 負け
4試合目 7 108 8 6 6 1 7 勝ち
5試合目 6 117 5 4 4 4 7 勝ち
●野茂英雄(1995)
登板試合数 投球回数 球数 被安打 失点 自責点 与四球 奪三振 試合結果(チーム)
1試合目 5 91 1 0 0 4 7 勝敗なし(負け)
2試合目 4回2/3 97 9 7 7 2 7 勝敗なし(勝ち)
3試合目 4 94 0 3 1 7 5 勝敗なし(勝ち)
4試合目 7 107 2 0 0 3 14 勝敗なし(負け)
5試合目 6 106 8 4 3 2 7 勝敗なし(勝ち)

 比較対象として、同じようにポスティング制度でメジャー移籍し、開幕前から注目を集め続けた松坂大輔投手、ダルビッシュ有投手の2人。さらに日本人メジャー選手のパイオニアである、野茂英雄投手それぞれの1年目の開幕から5試合の投球成績も併載した。

 4選手とも、キャンプ後に初めてメジャーの公式戦に登板するという点では皆、条件は一緒となる。滑りやすいメジャー球、硬いマウンドなど、日本とは違う環境の中で始動するわけだから、4月(野茂の場合はロックアウトによる開幕の遅れで5月)はある意味、誰もが手探りの状態となるはずだ。

 だが、田中の投球はどの成績を見ても、他の3投手以上に安定しているのが理解できる。特に与四球数が圧倒的に少ないことから、メジャー球の不安をまったく感じさせない抜群の制球力を披露していることがわかる。

【次ページ】 メジャーでもトップクラスの省エネ投球。

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