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フェデラーも翻弄する、
錦織とコーチの化学反応。
~マイケル・チャンの薫陶を受けて~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byMannys Photography

posted2014/05/03 10:30

錦織(左)は、フェデラーから2勝目をあげ、バルセロナ・オープンではクレーコート初勝利を飾った。

錦織(左)は、フェデラーから2勝目をあげ、バルセロナ・オープンではクレーコート初勝利を飾った。

 マイケル・チャンコーチと迎えた2014年シーズン、錦織圭の出足はなかなか快調だ。2月の米国メンフィスでは大会2連覇を達成。3月のマイアミでは、最後は故障で棄権という悔しさを味わったが、当時世界ランク4位のダビド・フェレールと同5位のロジャー・フェデラーを破る殊勲があった。

 最近、英語のテニス専門サイト、テニス・ドットコムにチャンコーチのインタビューが掲載された。当然、錦織の指導にも言及している。チャンは「問題は確実に改善され、いい方向に進んでいる」としながら、「もう少し時間のかかりそうなところもある」「繰り返し言い続け、しみ込ませていくには時間もかかるんだ」と話している。ニヤリとしてしまったのは、錦織が昨年のオフシーズンに書いたブログを思い出したからだ。

「今までにないものを(マイケルに)たくさん教えてもらいました」と書く一方で、教わることがあまりにも多く、しかも細かい点に及ぶため、「さっき言われたこととかも忘れます」と、錦織はこっそり舌を出して告白していた。

フェデラーのバックハンドを攻めた師匠譲りの狡猾さ。

 多くを求めるコーチと、ものにしようと必死に取り組む(時には右から左に聞き流す)生徒のやり取りが目に浮かぶようだ。尊敬する師と、錦織はいい時間を過ごしているように見える。ある時は寺子屋のように手取り足取り教わり、ある時は体育会式にしごかれながら、学ぶ楽しさを味わっているに違いない。

 マイアミのフェデラー戦で、錦織は執拗に相手のバックハンドを攻めた。これもコーチ譲りのしつこさ、狡猾さと言っていいだろう。あこがれの選手であったフェデラーに臆することなく向かっていけたのは、チャンに植え付けられた自信が支えになっていたのかもしれない。

「ここまでのプロセスはうまくいっている」というチャンコーチの見方に異論はない。

 チャンは今後、フェデラー戦の勝利も愛弟子を奮い立たせる材料に使うだろう。――君はフェデラーにも勝っている。ラファエル・ナダルにも、全豪でいい試合をしたじゃないか。何も恐れるな。絶対に勝てる。

 チャンコーチは、そんな言葉で錦織をヨーロッパのクレーコートシーズンに送り出すことだろう。

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