SCORE CARDBACK NUMBER

歴史的な初得点。
ジブラルタル代表が見る夢。
~スペインとの緊張関係を超えて~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2013/11/18 06:00

歴史的な初得点。ジブラルタル代表が見る夢。~スペインとの緊張関係を超えて~<Number Web> photograph by Getty Images

ジブラルタルはUEFA54番目の加盟国。フル代表の姿が見られるのはEURO2016の予選から。

 イベリア半島の南端にひっそりと佇むジブラルタルのサッカーが、欧州で少しずつ存在感を示し始めている。

 ジブラルタルは英国の海外領土で、同地域を巡ってはこのところスペインと英国が対立を深め国際問題となっている。そんな中、ジブラルタル代表は憂鬱な政治問題を忘れさせてくれるような明るいニュースを住民に届けている。

 まずは今年5月にジブラルタルのUEFA加盟が正式に認められたことだ。これによりジブラルタル代表は長年望んでいたUEFA主催の大会に出場できるようになった。EURO出場さえも、もはや不可能ではなくなったのである。

 当然ながら現実的に考えるとEURO出場は夢のまた夢だ。人口はたった2万9000人で、スタジアムはひとつ。プロリーグも存在しない。アマチュアの1部リーグは6クラブによって細々と争われてきた。

 以前からジブラルタルのUEFA加盟に強く反対していた隣国スペインでは「UEFAに加盟しても、初得点すら何年後にやってくるか分からない」と揶揄されていた。

国際舞台への一歩となったU-17欧州選手権での先制点。

 しかしジブラルタルサッカーを鼻で笑うスペイン人の予想とは裏腹に、歴史的初得点は意外と早くやってきた。10月24日、アルメニアで行なわれたU-17欧州選手権予選のアイルランド戦で、ジブラルタルは先制点を決めたのである。結果的に逆転負けを喫するも、劇的な1点にジブラルタルは沸いた。歴史に名を刻んだFWのジョージ・ウィンクは「信じられない気持ちだったよ。誇りに思っている。でも一番重要なのはジブラルタルがUEFAの大会に出場できるようになったこと」と話している。

 この初得点に関して、スペインのメディアは一切報じることはなかった。一方でジブラルタルの地元紙クロニクルはチームを『英雄たち』と絶賛し、紙面で大きく取り扱っている。結果的にジブラルタルU-17チームは予選敗退したが、地元空港に戻った彼らを待っていたのは、賛辞を送る大勢の住民だった。

 ジブラルタルを巡るスペインと英国の国際問題は未だ決着がついてはいない。しかし少なくともジブラルタルのサッカーは、欧州サッカー界の一員として国際舞台を歩み始めている。

関連コラム

ページトップ