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デ杯WG復帰を決めた、
“優男”添田の変身ぶり。
~錦織圭に続く2番手の意地~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2013/10/14 08:02

デ杯WG復帰を決めた、“優男”添田の変身ぶり。~錦織圭に続く2番手の意地~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

2勝2敗のタイから初めて勝利した添田(中央)は、「勝って泣いたのは初めて」と語った。

 なんとしてもワールドグループに復帰する――デビスカップ日本代表の熱い思いを、エース錦織圭に次ぐ2番手、添田豪がかなえた。9月13日から行なわれた入れ替え戦で、日本はコロンビアを3-2で下し、16カ国からなるワールドグループへの2年ぶりの復帰を決めた。最終日の第1試合で錦織が勝って2勝2敗となり、チームの命運は最終試合にかかったが、添田がアレハンドロ・ファジャを逆転で下した。

 ファジャとの対戦成績は0勝1敗、苦手意識もあったという。しかし、添田には負けられない理由があった。デ杯で2-2からの最終戦に登場するのは4度目、これまで3戦全敗だった。最善は尽くしたが、チームの期待を裏切る形になった。なかでも'07年のルーマニア戦と昨年のイスラエル戦で味わった悔しさは「ずっと引っかかっていた」。そんな思いは金輪際、味わいたくなかったのだ。

 重圧との戦いは錦織の試合の最中から始まっていた。同僚が勝った瞬間から自分の両肩に全責任がかかってくる。団体戦ならではの緊張感だ。だが、ここで3度の失敗から得た教訓が生きる。

任侠映画で見た「自分に負けんじゃねえ!」の心意気で。

「今までは(戦う前に)ネガティブな方向に考えたり、発言してしまった。そこに弱気がつけ込んでくると思ったので、今日は考えないようにした」

 第1セットを失う苦しい展開だったが、「いつも以上に気持ちを入れた」。ポイントの合間には、こうつぶやいた。

「自分に負けんじゃねえ!」

 ドスのきいた声の主は、前夜、宿舎で見たヤクザ映画の登場人物。一人二役で自分にカツを入れた。

「あいつらしいですね。彼は自分の世界を作るタイプ。プレッシャーで極限状態だったはずだが、その中でベストを尽くすために、自分を奮い立たせる方法を考えたのでしょう」

 ジュニア時代の添田を指導した笠原康樹コーチの証言だ。繊細で、自意識の強い添田。テニス選手として悪いことではないが、それが勝負の邪魔をすることもあった。開き直り、腹をくくって戦うのが苦手なのだ。この日はマッチョを装うことで、繊細さに蓋をしたのだろう。

 優男タイプの添田が、鬼になって、鋭い牙を突き立てた。「4度目の正直」で、添田が男になった。

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