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フェデラーの動きに衰え。
史上最強王者の心境は?
~前向きに臨む世代交代の戦い~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2013/08/18 08:00

ウィンブルドンで116位のスタホフスキーに敗れ、準々決勝に残れなかったのは11年ぶり。

ウィンブルドンで116位のスタホフスキーに敗れ、準々決勝に残れなかったのは11年ぶり。

 ロジャー・フェデラーはいつまで持ちこたえられるのか。引退の日が決して遠くないことを示す状況証拠がいくつかある。116位、114位、55位。これはウィンブルドンからの3大会で彼が敗れた相手のランキングだ。腰が万全でないとはいえ、失態が続いた。ランキングも5位に落ちた。8月8日で32歳という年齢ももちろんネックになる。

 興味深いのは、打球面の大きなラケットを試したことだ。面が大きければスイートスポットが広がり、ラケットが腕力を補って打球にパワーが加わる。だが、熟練の技を持つ彼がなぜ今、用具を変えるのか。そこに心の揺れも読みとれる。

 フェデラーの心境を探ろうと、ある選手に話を聞いた。日本の第一人者として活躍、世界ランクを800位台に落とした今も現役を続ける鈴木貴男だ。フェデラーとは2度対戦、あわや大番狂わせという接戦も演じた。その鈴木もフェデラーの動きの衰えを指摘し、引退はそう遠くないと見ている。ただ、「コンスタントにはできなくても、いいプレーができる時があるから、まだやれるという気持ちも芽生えてくるのではないか」と、迷いながらもトライし続ける姿に共感を覚えている様子だ。

ジョコビッチやマリー、錦織らの勢いを止めるための“遊び心”。

「やめる時期なんて人に決められたくない。彼も周りに言われて受け入れるのは面白くないんじゃないかな? 続けていれば、何かびっくりさせるくらいのことはできるという思いがあるはず」

 反発心なのかと問い返すと、鈴木の答えは「遊び心かな」。

「全盛のジョコビッチやマリーに対してどれだけできるか、錦織圭のような若い選手の勢いをどうやって止めてやろうかと楽しんでいるという印象もある」

 36歳の鈴木が自身の心境をフェデラーに託したところがあったとしても、ポジティブな面に目を向けた指摘が興味深い。実際、フェデラーも「いかに正しい決断をして前に進むかだね。今まで、うまくいかなかったときも僕は立ち直る方法を見つけてきたし、今もそれを探しているところだ」と苦境にも前向きだ。

 彼は、これまでのテニス人生がそうであったように、スポーツを存分に謳歌しながら引退していくのだろうか。今、注目すべきは彼が「いつ」やめるかではなく「どう」やめるかなのだと思う。

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