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ナダル1強時代突入か?
今後のテニス界を占う。
~フェデラーとの物語は最終章へ~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2010/10/24 08:00

ナダル1強時代突入か?今後のテニス界を占う。~フェデラーとの物語は最終章へ~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

全米で初優勝を飾り、24歳で生涯グランドスラム達成。今年は4大大会中3大会を制した

 思い出したのはローリング・ストーンズの初来日だ。期待が高まると同時に「本当に来るのだろうか?」と半信半疑のファンもいたのではないか。楽天ジャパンオープンでは、トップ選手が開幕直前に出場をキャンセルする例が何度もあった。熱心なファンは、顔を見るまで安心できないと思っていたことだろう。しかし、ラファエル・ナダルは無事、有明コロシアムに姿を見せた。待ちに待った初来日だ。

 2010年はナダルにとって輝かしい年になった。全仏で2年ぶりに優勝し、ランキング1位の座を奪い返した。また、初めて全米を制し、史上7人目の生涯グランドスラムを達成した。

 彼が1回戦を迎えた10月5日は、錦織圭も登場するとあって、平日にもかかわらず1万人近い観客が詰めかけた。ナダルを迎える声援はそれこそロックコンサートのようだった。いずれ“伝説”になろうかという選手が、キャリアのピークを迎えた時期に実現した初来日。その異次元のテニスを目撃するために、全国からファンが集結したのだ。

「天才型」フェデラーに対する「努力型」ナダルの複雑な感情。

 9月末、ナダルに密着取材したドキュメンタリーがWOWOWで放映された。その中で、印象的な場面があった。コーチたちがフェデラーの力の衰えを口にすると、ナダルがその見方に異を唱える。ムキになったような口調に、彼のライバルに対する複雑な感情がうかがえた。

 ナダルは「フェデラーの存在が自分を引き上げてくれた」と何度も口にしている。天才型のフェデラーに対し自分を努力型ととらえ、追いつくには必死に練習するしかない、とみずからをむち打った。ライバルの衰えを認めなかったのは、油断するな、彼は必ず復調する、と自分を戒める気持ちがあったからではないか。

 ジャパンオープンの会見でも「(1位になっても)僕の目標は常にテニスの上達にある。精神的には以前と何も変わらない」と気持ちが緩んだ様子はない。

 本人の意識は別にして、この1年でナダル、フェデラーの二強時代からナダル時代へと男子テニスが大きく舵を切ったのは間違いない。彼が今後、どんな偉業を達成するか。最終章を迎えつつあるフェデラーとのライバル物語は、どんな展開を見せるのか。テニス界はしばらく、この男を中心に回っていくことになる。

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