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相次ぐ誤審で露呈した、
現行システムの限界。
~ランパード“幻のゴール”の理由~ 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byGetty Images

posted2010/07/09 06:00

相次ぐ誤審で露呈した、現行システムの限界。~ランパード“幻のゴール”の理由~<Number Web> photograph by Getty Images

 W杯という舞台では、ときに「誤審」が、語り継がれるドラマを生む。1966年W杯決勝の“ウェンブリー・ゴール”しかり、'86年のマラドーナの“神の手”しかり。今でも真相をめぐり、問題のシーンが繰り返し流されている。

 しかし、誤審がこれほど立て続けに起こると、さすがに問題視せざるをえないだろう。今回のW杯で審判の判定ミスがあまりにも多いことを受け、名将フース・ヒディンクはこう訴えた。

「近年、いたるところで誤審を目にするようになった。すぐにでもビデオ判定や、ボール内にチップを埋め込む技術を導入すべきだ。私はプラティニ、ベッケンバウアー、クライフたちに呼びかけていきたい」

ベッカムの猛抗議も覆らなかったノーゴール判定。

 決勝トーナメント1回戦のドイツ対イングランド戦、ランパードのシュートがバーに当たり、跳ね返ったボールは数10センチもゴールラインの内側に入ったにもかかわらず、ウルグアイ人のラリオンダ主審はゴールを認めなかった。スタッフとしてベンチ入りしたベッカムが猛抗議したが、判定が覆ることはなかった。

 今年3月、FIFAの年次総会で、ビデオ判定を導入するかどうかが真剣に議論されていた。だが、「サッカーの試合は世界中どこでも同じ方法で実施されなければいけない」という理由で、最終的に否決。今大会から実施されていれば、ランパードのゴールが幻に終ることはなかったはずだ。

 同じく決勝トーナメント1回戦のアルゼンチン対メキシコでは、オフサイドのポジションにいたテベスが先制ゴールを決めたが、イタリア人の副審は旗を上げなかった。格下のメキシコにとってはあまりにも痛い失点だった。

サッカーの高速化で3人の“眼”だけではカバーできない。

 なぜ、今大会はこれほど誤審が目立つのだろう?

「フットボールの高速化によって、審判に求められるレベルが高くなってきている」

 そう分析するのは、ドイツのキッカー誌のカールハインツ・ビルト記者だ。

「スペイン代表を見ればわかるように、ワンタッチで素早くパスをまわすチームが増えてきた。さらにボールの改良により、シュートも速くなっている。以前に比べてプレースピードが格段に上がっているんだ」

 もはや主審と副審を合わせた3人の“眼”だけでは、ピッチをカバーし切れなくなってきたことに、多くの人が気づいている。今季、UEFA主催のヨーロッパリーグでは、ゴールのすぐ脇に立ち、ボールがラインを割ったかを判定する審判5人制を試験導入した。

【次ページ】 世界の審判リストの上位がW杯に来ているわけではない。

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