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選手会が打ち出したWBC参加拒否。
“大人の事情”だらけの真相とは? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNaoya Sanuki

posted2012/08/06 10:30

選手会が打ち出したWBC参加拒否。“大人の事情”だらけの真相とは?<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

2009年の第2回WBCでは決勝で韓国を下し、連覇を達成。日本中が歓喜に沸いた。果たして、あの興奮を再び味わう機会は訪れるのか。交渉の行方が注目される。

 WBCとは実に“大人の事情”に包まれた大会である。

 野球の世界市場を独占しようと考えているMLBは、そのマーケット戦略の一環としてこの大会を企画し、スタートさせた。だから、決してアジアの国々と「対等な立場」で歩もうなどという意思はないだろう。

 ただ、その一方でアジア(特に最大の狙いは中国だと言われているが)の野球市場が拡大していくことは、もちろん彼らにとっても大歓迎なことではある。そのためにWBCには日本や韓国、台湾そして中国に、ぜひとも参加して欲しいわけだ。そこで経済的に大きく貢献しているNPBには過去2大会でも、彼らなりには配慮をしてきたつもりだっただろう。それがMLBと同選手会で利益の66%を独占するのは別にして、韓国プロ野球機構(KBO)には利益配分が9%なのに対して、NPBには何と13%も(!)配分しているという厚遇に表れているわけである。

WBC問題で揺れる日本球界を取り巻く“大人の事情”。

 一方の日本球界は、と見回してみても、これまた“大人の事情”が色々とあるようだ。

 大ざっぱな言い方だが、この大会できちっとお金儲けをしているのは、2つの会社しかない。一つは日本ラウンドの興行を任されている読売新聞社であり、もう一つは日本の大会運営や放映権、スポンサーを仕切っている広告代理店である。

 過去2大会では幸いにも日本代表が優勝したことで、NPBも利益は得ている。その利益は出場した選手と選手会、そして12球団とアマチュア野球の関係団体まで配分されているが、その額が世界一に見合うものだったのかどうか、またMLBとMLB選手会の得ている金額に対して妥当なものだったのかどうかには、大いに議論の余地のあるところだった。

 ただ、日本のプロ野球の現状を鑑みたとき、WBCの優勝はこうした金銭以上に、目に見えない“利益”を生み出してきたことも疑いようのない事実ではなかっただろうか。

 選手たちは日の丸を背負ってナショナルマッチを戦う誇りを手に入れた。世界のトップレベルの選手と試合をすることも、アスリートとしての選手にとっては、最高の舞台だったはずである。より高いレベルでの戦いを希求する――これは選手の本能とでもいうべきものでもあり、日本のプロ野球に身を置く者にとっては、現状ではWBCがその欲求を満たすただ一つの大会であるのも事実なのだ。

【次ページ】 新たなファンを獲得する意味でもWBCの意義は大きい。

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新井貴浩

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