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<忘れられない瞬間を> フェデラー 「悲願の生涯グランドスラムを達成」~2009年6月7日:全仏オープン~ 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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posted2012/05/24 06:00

<忘れられない瞬間を> フェデラー 「悲願の生涯グランドスラムを達成」~2009年6月7日:全仏オープン~<Number Web> photograph by AFLO

優勝が決まった瞬間、赤土に崩れ落ちるフェデラー。スタンドの観客も歴史的瞬間に歓喜し、彼の偉業を讃えた。

 時代は転換点を迎えていた。当時、ロジャー・フェデラーは世界ランキング2位。前年8月に、'04年2月から守り続けた1位の座をラファエル・ナダルに明け渡していた。背後に迫るのはアンディ・マリー、ノバク・ジョコビッチの若手。フェデラーはまだ27歳だったが、限界説もささやかれていた。王者として重圧と闘った4年半で、心身のエネルギーが大きく目減りしたと見られていたのだ。

 1月の全豪では決勝でナダルに敗れ、悔し涙を流した。マリーやジョコビッチにも連敗するなど、'09年の前半戦は苦闘が続く。自信のなさが、そのままショットに現れていた。

 4月、テニスツアーはヨーロッパのクレーコートに舞台を移した。四大大会を13度制したフェデラーだったが、クレーの全仏ではまだ優勝がなかった。初優勝を飾れば史上6人目の生涯グランドスラム(四大大会全制覇)となるが、シーズン序盤の戦いを見る限り、雲行きはかなり怪しかった。

 球足の遅いクレーはそもそも得意ではない。しかもナダルという難敵がいた。全仏では'06年から3年連続、決勝でナダルに敗れていた。なかでも'08年はフェデラーファンなら目をそむけたくなるような惨敗だった。攻めていけばカウンターを食らい、ボールが甘くなればトップスピンでコートの両翼に振り回される。3セットで計4ゲームしか奪えなかった。憔悴しきった王者の表情が悲しげだった。

自信を取り戻すきっかけとなったナダル戦の勝利と子供の誕生。

 それでも、フェデラーはあきらめていなかった。春先は毎日4時間の練習をこなし、クレーの戦いに備えた。自信を取り戻すきっかけとなったのは、全仏の前哨戦、マドリードの決勝でナダルを破り、直接対決の連敗を5で止めたことだろう。また、妻ミルカさんの妊娠も動機づけになったに違いない。全仏開幕前の会見でフェデラーはこう話している。

「子供の誕生は僕の人生に大きな影響を与えると思う。(現役を続け)子供にプレーしている姿を見せたいね」

 だが、意気込んで臨んだ全仏は苦戦の連続だった。4回戦は2セットダウンからの逆転勝ち。最大の危機は新鋭フアンマルティン・デルポトロとの準決勝だった。過去のイメージを覆すほど攻撃的なデルポトロに第1、第3セットを奪われたが、波状攻撃をなんとかはね返し、逆転で決勝進出を決めた。

【次ページ】 隣国スイス出身の元王者に送られた大声援。

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