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私が目撃したバーレーンGPの真実。
マスコミ発表と現地体験のズレとは。 

text by

尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byMasahiro Owari

posted2012/05/06 08:01

私が目撃したバーレーンGPの真実。マスコミ発表と現地体験のズレとは。<Number Web> photograph by Masahiro Owari

封鎖されている街のはずだったシトラで見かけたF1反対運動の張り紙。

「1億円のタイプをお願いします」という聞き覚えのある声が、成田空港出発ターミナルの海外旅行損害保険の隣の窓口から聞こえてきた。目をやると、そこには仕事仲間の、ある先輩ジャーナリストが立っていた。かくいう私も、滅多に入らない海外旅行損害保険の、しかももっとも補償の厚いタイプを申し込むところだった。

 私だけでない。多くのグランプリ関係者や報道関係者たちも、これまで抱えたことがない不安を抱いて、バーレーンGPへ発っていた。それは、中国GPから2週間連続開催だったにもかかわらず、一度日本に帰国してからバーレーンへ向かった小林可夢偉のこんな言葉からも窺える。

「いつ中止になるかわからなかったので、中国から直接バーレーンへ入る計画はしていませんでした」

 可夢偉だけでなく、日本のメディアの多くもキャンセル可能な条件で航空券を用意していたほどである。「いつ何が起きても不思議ではない」。それがバーレーン国外にいる人間から見たバーレーンである。

“騒乱を主導するシーア派”の地元住人から受けた親切。

 しかし、バーレーンに到着すると、そういった不安は杞憂に終わった。例えば、私は到着早々、こんな待遇を受けた。

 私は、レース主催者側がメディア用に用意したシャトルバス送迎付きのホテルではなく、インターネットの予約サイトから自分でマナマ市内のホテルの予約を取っていたのだが、ある手違いがあって、現地に到着してからレンタカーでホテルを探さなくてはならない羽目に陥った。

 マナマ市内で偶然、道端で商売をしていた地元の人に「ホテルがこのあたりにないか」と尋ねると、その人は「知り合いに聞いてみる」と言って、四方八方手を尽くしてホテルを探してくれたのである。しかも、場所はレース主催者側が用意したメディア用ホテルと近所だったにもかかわらず、レース主催者側がメディア用に設定したディスカウント価格よりも3割以上安い値段だった。

 さらに驚いたのは、その人がシーア派だったことである。

 バーレーン騒乱の原因は、国権を握るイスラム教スンニ派のハリファ王家に対して、国民の多数を占めるイスラム教シーア派の住民が反旗を翻したことだと主だった報道機関では説明されている。しかし、その地元民によれば、それは必ずしも事実ではないという。

「私にはスンニ派の友だちもたくさんいるし、シーア派だけどハリファ王家を支持している。確かに政府に反対している人間の多くがシーア派ではあることは間違いないが、それはむしろ少数派だよ」

【次ページ】 火炎瓶を投げ込まれそうになったチームスタッフも……。

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