3月5日から大阪府門真市のなみはやドームで行なわれた国別対抗戦デビスカップで、日本はフィリピンに圧勝した。選手個々の実力や世界ランキングを見れば、日本の優位は動かないものと思われた。したがって、これは勝敗よりも内容の問われる試合だった。
なかでも注目されたのは、昨シーズン終盤から世界ランクで国内男子のトップに立つ伊藤竜馬(3月8日現在、201位)の戦いぶりだった。昨年5月のウズベキスタン戦でデビス杯に初出場し、全米オープンでは予選3回戦に進出した、21歳の若きエースだ。
格上の相手に勝利し、「自分の良さを出せた」と安堵。
初日の第1試合に登場した伊藤は、勝つには勝ったが、ランキング600位台の選手相手にフルセットの大苦戦。団体戦の重圧で本来の動きができず、「こんなに緊張したのは初めて。立ち上がりは体がロボットのようだった」と苦笑した。
再びコートに立ったのは第3日。すでに日本の勝利は決まっていたが、対戦相手のベテラン、セシル・マミートは自己最高72位の強敵で、伊藤の力を計るには恰好の相手だった。伊藤は初日のように浮き足立つことなく、攻守にバランスのとれたプレーで勝利を収め、「まだ課題はあるが、自分の良さを出せた」と安堵の表情を見せた。
「今のままでは100位突破は難しい」と手厳しい声も。
ただ、及第点を与えられるかどうかは、この試合の意味をどう捉えるかによる。テレビで試合を解説した元デビス杯選手の辻野隆三氏は「消化試合だからこそ、極端なくらい攻撃的にプレーしてほしかった」と注文をつけた。ショット自体は一流だが、自分から攻める姿勢が足りない、というのが辻野氏の伊藤評。「今のままでは、彼の目標である100位突破は難しい」と手厳しかった。
伊藤自身は「攻めるべきところで攻められた」と振り返ったが、辻野氏は「無理をしてでも攻めてほしかった」。この落差は、経験の差から来るものだろう。現役時代、世界の壁に挑んでは跳ね返された辻野氏。世界の厳しさを知る辻野氏は、伊藤にこの試合をトライアンドエラーの機会にしてほしかったのだ。
海外を転戦し、敗戦の痛みとともに世界のテニスを体感するという経験が、伊藤には乏しい。今の彼に必要なのは、そうした機会をみずから求めることだろう。彼の脱皮は、そこから始まるに違いない。
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