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ウィンブルドンを魅了。
伊達の色彩豊かなプレー。
~V・ウィリアムズ戦の反響~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2011/07/11 06:00

ウィンブルドンを魅了。伊達の色彩豊かなプレー。~V・ウィリアムズ戦の反響~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

グラフに敗れた1996年準決勝以来、15年ぶりのセンターコート。2時間56分も激闘が続いた

 クルム伊達公子は、練習コートでジョン・マッケンローに声を掛けられたことをブログで明かしている。

「ビーナスとの試合は素晴らしかった。僕はキミコのプレーを誇りに思うよ」――マッケンローは伊達が練習していたコートにやってきて、こう語りかけたという。元悪童、今はテレビ解説者として評価の高いマッケンローにしても、ビーナス・ウィリアムズを苦しめたあの2回戦は、よほど印象深かったのだろう。

 マルチナ・ナブラチロワなど往年の名選手や、現役選手たちも「少しの差だったわね」などと声を掛けてきたという。ビーナスはウィンブルドンで5度優勝。ビッグサーブを武器に芝では無類の強さを誇る。その芝の女王に最終セット6-8と食い下がった40歳に、選手たちもあらためて敬服したに違いない。確かに、テニス好きならだれでも話題にしたくなるような試合だった。

 センターコートの観客も、体格で劣る伊達がパワーテニスのビーナスを攻め立てたことに、また、伊達が最近の女子ではあまり見られない多彩な技術を披露したことに感銘を受けた様子だった。

現代的なスピードと古き良き時代のテニスを融合した伊達のスタイル。

 今でこそベースラインで強打する選手が攻撃的と呼ばれるが、元々、攻撃的なテニスとはネットをとってボレーで仕留めるプレーを指す。球足の速い芝のウィンブルドンでは特にネットプレーが重視され、観客もそのスタイルを好む。スライスからのネットアプローチに、切れ味鋭いボレーと、伊達が見せたのはまさにそういうテニスだった。本場のファンは伊達のテニスに古き良き時代の香りをかぎ、現在の単調な女子テニスにはない色彩の豊かさを楽しんだに違いない。

 しかも、ただ古典的なだけではない。現代テニスのスピードも兼ね備えている。ビーナスも、伊達のスタイルに戸惑ったことは認めながら、「彼女は大きなリスクを冒しながら戦った。タフな相手だった」とプレーそのものを称えた。

「やるべきことはすべてやった。この大舞台でそれができたことに大きな手応えがある」と伊達は満足そうだった。

 見る者を本当に魅了したのは、伊達の少し風変わりなプレースタイルではなかった。彼女が「やるべきこと」を探り、それをコートで表現し尽くしたことに、皆、心を動かされ、喝采を送ったのだ。

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