チーム内では自身を「ミスター」と呼ぶように通達したストイコビッチ監督。チーム初のGM久米とグランパスの両輪となっている

グランパスの名GMに尋ねた、
JリーグにGMが少ない理由。

木崎伸也 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Shinya Kizaki

photograph by Masahiro Ura

グランパスの名GMに尋ねた、JリーグにGMが少ない理由。

関連アスリート・チーム:

チーム・選手名
ドラガン・ストイコビッチ
玉田 圭司
名古屋グランパス

 Jリーグを見ていて、前から不思議に思っていたことがある。

 なぜ、こんなにもGM(もしくは強化部長)が表に出てこないのだろう?

 もちろん報じるマスコミ側にも責任があるのだろうが、J1のクラブの公式HPを開いても、名前すら載せていないケースが多い。顔写真付きで紹介されていたのは、名古屋グランパスの久米一正GMとFC東京の鈴木徳彦強化部長くらいだった。

 言うまでもなく、GMは監督と同じくらい重要なポジションだ。限られた契約年数の中で、長期的なプランを描きながら、チームを強化することが求められる。

 当然ヨーロッパでは注目が集まり、マネージャーやスポーツディレクターが日々TVカメラの前に引っ張り出され、ドイツでは監督の会見に同席するのが当たり前。監督と同じくらいの重圧がかかる。それに対して日本は、「部長」という名前が象徴するように、何やらサラリーマン的なニオイが抜け切れていない。

サラリーマン強化部長からプロのGMへ。

 いったい現場の人間は、どう感じているのか。このモヤモヤとした疑問を、Jリーグきっての敏腕GM、名古屋の久米一正にぶつけてみた。

写真

 久米は柏レイソル時代、多くの“強化部長”と同じように親会社(日立)からの出向だったが、03年にプロのGMとして食べていくことを決断。清水エスパルスへ移籍すると、低予算をもろともせずに立て直し、06年から2年連続で4位という好成績をもたらした。そして昨年、名古屋グランパスに籍を移し、たった1年で万年中位のクラブを3位に躍進させた。スカウト、年俸査定、代理人選び、オーナーとの付き合い方など、独自のノウハウを確立しており、それを一冊の“GMバイブル”にまとめあげた。「この本があれば、どこに行っても仕事ができる」と久米は笑う。

 選手をその気にさせるのもうまく、玉田圭司には「オレとミスター(ストイコビッチ監督)といっしょにやれば、絶対に代表に復帰できる」と暗示のように言い続け、見事実現させた。一方スポンサーと接するときは、日立の営業時代に鍛えたプレゼン能力をいかんなく発揮し、大きな信頼を得ている。

プロのGMが提唱する「GMライセンス制度」とは?

 その久米が、現状に大きな危機感を抱いているという。

「今Jリーグには、GMをできる人材が少なすぎる。この問題を解決しない限り、Jリーグの発展はないと思っています」

 久米が一番問題視しているのは、初めからGMを目指す人が少ないことだ。現状では監督になれない人が、GMに流れ着くケースが多くなっている。

 そこで久米が提案するのが、GMのライセンス制度の導入だ。

「これは川淵(三郎)さんにもずっと言い続けているんですが、監督と同じようにGMもライセンス制にして、各チームに資格者のGMを置くように定めるべき。今、引退後の道筋が監督しかないから、猫も杓子もそちらを目指しますが、中にはGMの才能を持った人がいるはずなんです。『こういう道もあるんだ』と気がつかせるためにも、制度化すべきだと思っています」

 日本のクラブのメインスポンサーには世界的な企業が名を連ね、大きなポテンシャルを秘めている。そこからもっとエネルギーを引き出すためにも、力のあるGMが必要だ。日本サッカー界は、GM講座やJFAスポーツマネージャーズカレッジといった試みを始めているが、もっと根本的な制度改革を行うべきだろう。

■関連コラム► カギを握るGMの「言動」。 【Column from Germany】 (2009年3月13日)
► 祖母井GMに学ぶ、「いい監督」の見分け方。 (2007年6月28日)

(更新日:2009年7月22日)

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筆者プロフィール

木崎伸也

木崎伸也

1975年1月3日、東京都出身。2002年W杯後にオランダへ移住し、'03年からドイツ在住。現地のフットボール熱をNumberほか多くの雑誌・新聞で伝えてきた。'09年2月1日には帰国し、海外での経験を活かした独自の視点で日本のサッカージャーナリズム界に新風を吹き込んでいる。著書に「2010年南アフリカW杯が危ない!」(角川SSC新書)、「サッカーの見方は1日で変えられる」(東洋経済新報社)がある。7月23日には最新刊となる「世界は日本サッカーをどう報じたか」(KKベストセラーズ)を上梓した。


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