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ガンバ大阪が西野監督を
解任しない理由。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byMasahiro Ura

posted2009/07/07 11:31

15節修了時点で7勝6敗2分の5位。西野監督の掲げる攻撃サッカーで巻き返しなるか。

15節修了時点で7勝6敗2分の5位。西野監督の掲げる攻撃サッカーで巻き返しなるか。

 もしレアル・マドリーが首位から勝ち点15差をつけられ、さらにCLでも早期敗退したら……確実に大騒ぎになる。事実、昨年12月、ベルント・シュスターは首位バルセロナに勝ち点9差をつけられた時点で、解任された。前シーズンにレアルを優勝に導いたことなど、一切考慮されずに。

 では、Jリーグで、同じことが起こったら?

 7月1日、ガンバ大阪は川崎フロンターレに0対1で敗れ、首位鹿島アントラーズとの勝ち点差は15に拡大した。その1週間前に行われたACLでも同じく川崎に逆転負けし、前年王者がベスト16で姿を消した。

 だが、大阪では、監督解任の声が一向にあがる気配はない。

彼以上の指導者が見当たらないのでは? という現実。

 7月1日の川崎戦、確かにガンバは悪くなかった。圧倒的にボールをキープできたし、失点もカウンターでやられただけだ。遠藤保仁がPKを止められなければ、最低でも勝ち点1は得られたはず。試合後、会見場に西野朗監督が笑顔で現れたのも、内容では負けていなかったという自負があるからだろう。

 西野監督はガンバにとって、ただの監督ではない。2002年から指揮を取り、国内のタイトルだけでなく、昨季はチーム初のACL優勝を果たした。彼以上の指導者は日本では見当たらないのだから、解任はリスクがある――という意見も、理解できる。

 だが、そういう「ぬるま湯」しか用意できないのであれば、永遠に真のビッグクラブになることはできない。

 ヨーロッパのビッグクラブでは、前年にサポーターに大きな幸せをもたらしたとしても、今この瞬間に情けない姿をさらせば、すぐに解任の声があがる。湯は、あっという間に五右衛門風呂になる。

Jリーグの活性化のためにも監督の責任を追及せよ。

 もしかしたら、日本の場合、「首にする」という表現がいけないのかもしれない。筆者が知る限り、ドイツ語では「解任」を伝えるときに、決して命にかかわるような言い回しを使わない。『entlassen』(【1】退去を認める、釈放する、【2】解任する)という単語を使うのが一般的だ。ギロチン台にあげられ、首を落とされる、なんて冗談でも言わない。ブラジル生まれのセルジオ越後氏に、どうしたら日本人の解任に対するイメージを変えられるかを訊くと、彼は「監督交代は、クビじゃない。(業界内の)転勤なんだ」と答えた。

 いつ解任されるかわからないという緊張感が、名将をもう一段上のステージへといざなう。Jリーグをもっと刺激あるリーグにするためにも、サポーターもメディアもフロント陣も、「解任=クビ」という日本語が持つネガティブなイメージを克服するべきだ。

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