昨季は73試合に登板し、防御率1.27、 9勝1敗4セーブ35ホールドを挙げ「最優秀中継ぎ投手」のタイトルを獲得。契約更改では育成出身選手として初の年俸1億円を達成した

先発転向の巨人・山口鉄也。
成否を握る“マイナス思考”。

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text by Yasushi Washida

photograph by Naoya Sanuki

先発転向の巨人・山口鉄也。成否を握る“マイナス思考”。

関連アスリート・チーム:

チーム・選手名
原 辰徳
山口 鉄也
読売ジャイアンツ

 グッさんは非常にシャイである。

 プロ野球の選手なのに、ヒーローインタビューが大の苦手、初対面の人と話すと顔が真っ赤になってしまう。

「マウンドに上がる前は今でもドキドキします。打たれたらどうしようとか、どうしてもマイナスなことばかりを考えてしまう」

 巨人の山口鉄也投手のセリフだ。

 育成入団から5年目。この2年間は中継ぎエースとしてチームのV3、日本一の立役者となった。また昨年のワールド・ベースボール・クラシックでも侍ジャパンの中継ぎエースとして、数々の修羅場に登板して世界一のキーマンとなった。

 そんな左腕の口から出るのは、何とも言えない弱気な言葉ばかりだというのだから、ちょっと不思議な気持ちになってくる。

「15勝以上できる素質」が指揮官に決断を促した。

 その山口が今キャンプから先発転向に挑戦している。

「彼にはこの2年間、肉体的にも精神的にも非常に厳しい立場を強いてきた。幸いにも今は肩、ひじに故障もない。元気なうちにある程度、自分のペースで調整できる立場にしようと思った」

 配転を決断した理由を原辰徳監督は、こう説明した。

 中継ぎに定着したこの2年間は67試合、73試合とチーム試合数のほぼ半分に登板している。高校時代から肩を酷使せず、本格的な投げ込みはプロに入ってからということを差し引いても、この間の肩の消耗は想像を絶するものがあるはずだ。

「壊れてからでは遅い。それと何より、彼には15勝以上できる素質がある。巨人のエースを競える素材と考えて、先発にチャレンジさせようと決断した」

 指揮官の言葉には力がこもった。

 しかし、本人は戸惑いの連続のようだ。これまでは中継ぎとして少ない球数を目一杯の力で投げ込むことしか考えてこなかった。

「先発としてのペース配分がなかなかつかめない。力を抜いて投げると、どうしてもコントロールが微妙に狂うし、まだ先発の感覚が分からない」

 キャンプ序盤ではこうこぼした。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  “マイナス思考”の山口は登板間隔の長い先発には不向き?

筆者プロフィール

鷲田康

1957年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。およそ10年にわたり読売ジャイアンツ取材に携わった。2003年に独立。日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、Numberほか雑誌・新聞で活躍。著書に『僕のメジャー日記 松井秀喜』(文藝春秋)、『ホームラン術』(文春新書)がある。


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