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桜庭和志、総合を変革した男。 

text by

石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

PROFILE

photograph byMaki Fukatsu

posted2008/05/15 17:36

桜庭和志、総合を変革した男。<Number Web> photograph by Maki Fukatsu

 想像してもらいたい。

 もしも、桜庭和志がいなかったら総合格闘技は、現在のような身近なモノになっていただろうか?― ゴールデンタイムでテレビ中継され、年末には常にドームクラスの会場で興行があり、街角にあるジムではMMAを習うことができる、という状況に。

 十数年前までは、マイナーなものに過ぎなかった総合格闘技。確かに、アントニオ猪木やUWFの存在、あるいは修斗の誕生などが現在の総合格闘技に大きな影響を及ぼしているが、1990年代後半、桜庭という親しみやすいアイコンの出現によって環境は大きく変わった。

 桜庭は次から次へと猛者を倒していく。使う技は、不可思議なムーブに富んでおり、さらに格闘家にありがちな強面ではない。すべてが驚きと新鮮さに満ちたファイターだった。

 「たまたまハマったんですよ」

 桜庭はそう言った。

 PRIDEというイベントが髙田延彦対ヒクソン・グレイシー戦を行うため作られたことからも分かるように、1990年代後半、日本の総合格闘技界はグレイシーを中心に回っていた。

 そんな中、桜庭はホイスやホイラーといったグレイシー一族を撃破することで総合格闘技における時代の寵児になった。当時、柔術を武器に連戦連勝を続けるグレイシーに勝利することは、日本の格闘技界の悲願であり、夢であった。多くの選手たちがその厚い壁に跳ね返された中で、どうして桜庭はひょいっと一人そこを越えていくことができたのか。

 「うーん。柔術ってまず寝て戦うじゃないですか。僕はアマレス出身で、倒されないことをメインでやってきたわけです。でも、彼らは先に寝ちゃうから」

 自分の強みが「たまたまハマった」のだと桜庭は言う。グレイシーは、柔術の特性でもある下からの引き込みで試合を作っていく。対戦相手は、体の自由を奪われ、関節技の餌食になっていった。

 「相手が攻撃できないときに、こっちが攻撃をするということ。向こうは寝ているじゃないですか。そこでジャンプして攻撃すれば、ずるい言い方をすれば、こっちは危険やリスクはないわけです」

 言っていることは確かにその通りだが、桜庭以前、真剣勝負の最中に、踏みつけなど派手な動きを入れつつ、最終的に寝技に持ち込んで勝ってしまう選手はいなかった。

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