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最後の舞台まで自分を貫く
森上亜希子の姿勢。
~全日本テニス選手権の見所~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2009/11/05 06:00

最後の舞台まで自分を貫く森上亜希子の姿勢。~全日本テニス選手権の見所~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

HPオープンで引退セレモニーが行なわれ、同じ大阪出身の奈良くるみから花束を受けた

 9月の東レ・パンパシフィックで現役生活を終えた杉山愛に続き、森上亜希子が今シーズン限りでの引退を表明した。11月の全日本選手権が現役最後の大会となる。

 昨年夏に左ひざを手術した森上は、懸命のリハビリで、この4月に復帰を果たした。しかし、ひざは完治せず、夏の北米遠征を中止するなど、状態をにらみながらの調整と大会出場が続いていた。

「1試合こなしただけで腫れや痛みが出て、2~3日は普通にテニスができない状態が続く。練習でも体を追い込むことができず、この状況では以前の舞台(ツアー大会)に戻るのは難しいと感じ、葛藤はあったが、引退を決意した」

 会見で経緯を語る森上は終始冷静で、気持ちを高ぶらせるような場面はなかった。引退は決めたが、最後の試合を終えるまで気は抜けない、という思いがあったのだろう。

最後まで試合を捨てない気骨こそが森上の身上だ。

 この気骨が、いかにも森上だ。これまで四大大会で勝利をつかんでも、会見では厳しい表情を崩さなかった。記者は喜びの談話を期待しているのだが、彼女は「喜ぶのはまだ先の話」というように次戦に目を向け、気を引き締めていた。'06年の全仏1回戦で第3シードのナディア・ペトロワ(ロシア)を破る番狂わせを演じた時がまさにそうだった。

 笑顔も素敵だったが、困難を乗り越えようと歯を食いしばる姿が強く印象に残る。アウェーのフェド杯、対チェコ戦('05年)では日本代表の主力として孤軍奮闘した。熱けいれんで過呼吸の症状が出ても、試合続行の意思を見せ、涙ながらにコートを去ったのは同年の全米だった。

最後の全日本は「逃げるのではなく、優勝を目標に臨みたい」。

 最後のWTAツアー大会となったHPオープン(大阪市)では、1回戦は快勝したが、2回戦は故障の影響もあって、完敗した。最後の舞台となる全日本も痛みを抱えながらの試合になりそうだ。それでも、目指すは初優勝だ。全日本では2度のベスト4が最高成績。四大大会の常連となり、世界ランク50位前後につけていた'04 ~'06年には出場すらしていない。

「負けたくないという思いが強くて、逃げていたのだと思う。最後は、逃げるのではなく、優勝を目標に臨みたい」と森上。感傷にひたるために出場するのではなく、勝ちにいく。森上は、最後まで自分らしさを貫くつもりだ。

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