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S・ウィリアムズの暴言で
浮かび上がる判定の余地。
~日本人審判員の矜持かKYか?~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2009/10/02 06:00

S・ウィリアムズの暴言で浮かび上がる判定の余地。~日本人審判員の矜持かKYか?~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

S・ウィリアムズ(左)には暴言とラケットを折った行為に対し罰金約94万円が科された

 事件は、全米オープン女子シングルス準決勝、セリーナ・ウィリアムズ(米国)―キム・クライシュテルス(ベルギー)戦で起きた。

 あと2ポイントでクライシュテルスの勝利という場面。セリーナの第2サーブはフットフォールト(左足がベースラインを踏んだ)と判定され、ダブルフォールトとなった。激高したセリーナは判定を下した線審に暴言を吐き、その行為がルール違反とされた。彼女はこの試合でラケットを壊して一度警告を受けていたため、2度目の違反となって、規則に基づき1ポイントを失った。そのため、ただちに試合終了となったのだ。

審判は命がけ? 判定をめぐって脅迫されることも。

 暴言の内容についてはセリーナは口をつぐんだが、彼女の態度は明らかに線審を威嚇するものであり、主審の判断は妥当だったと思う。議論の余地があるのは、あの場面で線審がフットフォールトをとる必要があったのか、という点だ。

 軽微な違反なのだから、あのような重要な場面であれば“流す”べきだった、という意見を複数の人から聞いた。確かにその考え方にも一理ある。

 この判定を下したのは、日本人審判員のTさんだった。本人の声が聞きたいと思ったのだが、接触はかなわなかった。全米オープンの大会側と日本テニス協会は、Tさんの身の安全に配慮し、ガードを固めている。日本協会関係者によると、海外では、判定を理由に審判が脅迫を受けた例もあるのだという。

正確すぎるジャッジは“空気を読めない”愚行だったのか?

 その関係者によると、重要な試合の、しかも大詰めの場面では、フットフォールトを流す選択はありうるという。審判はコンダクターであり、試合を円滑に進めることも大切な仕事。そこで、ときには空気を読む必要もあるというのだ。

 それをTさんは厳密に判定してしまった。前出の関係者は「自分たちは1ミリのために神経をすり減らすプロフェッショナル、という自負があるのだろう」と、Tさんの気持ちを代弁する。見逃すことは審判としてのアイデンティティに関わるはずだ。判定に手心を加えれば、一方の選手を利することになる。審判がいちいち空気を読んで判定を下していたら、テニスの試合は成り立たない、とも思う。その気持ちを推察すると、空気を読むべきだった、などと軽々しく結論を出すことは私にはできない。

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