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10代ルーキー活躍の陰に
Jリーグの選手育成問題あり。 

text by

浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

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photograph byTsutomu Kishimoto

posted2009/05/08 06:01

10代ルーキー活躍の陰にJリーグの選手育成問題あり。<Number Web> photograph by Tsutomu Kishimoto

 どうやら今年は、10代ルーキーの当たり年である。大迫勇也(鹿島)、原口元気(浦和)が、その筆頭格。WBC以降、野球人気に押されがちなJリーグにおいて、彼らの活躍が明るい話題を提供している。

 こうなってみると、8大会ぶりにU-20ワールドカップ出場を逃したことが、うらめしい。Jリーグで経験を積み、成長した彼らなら、世界の列強を相手にどんな戦いを見せてくれただろうか。

 しかし、過ぎたことを今さら嘆いていても仕方がない。もはや彼らには、新たな目標に向かってもらうしかないのだ。4月20日から3日間行なわれたU-20代表キャンプが、A代表スタッフによる直接指導という異例の形態となったのには、そんな背景があった。

 監督の岡田武史が「短時間だったが、モチベーションも集中力も高かった」と話したように、若い選手たちにとってA代表の威光は、想像以上に大きなエネルギーとなったようだ。このキャンプによって、彼らがA代表を現実的な目標としてとらえられるようになったとすれば、“特別授業”の意味は大きかった。

 ただし、こうした10代ルーキーの活躍の陰には、喜んでばかりはいられない現状もある。

Jリーグには高卒選手を育てる機能が無いのか?

 大迫や原口のように、1年目から試合に出られる選手はいい。だが、即戦力になれない選手を長い目で見て育てられる環境が、残念ながら、Jリーグには備わっていないのだ。

 事実、10代ルーキーが華々しく活躍する一方で、じっくりと鍛えられた末に、3、4年目を迎えてようやくレギュラーに定着した、というような選手があまりに少ない。

 それは当然のことでもある。

 クラブユースや高校で、年間50、60試合をザラにこなしていた選手たちがプロになった途端、トップの公式戦に出られなくなり、極端に実戦経験が失われてしまう。

 サテライトリーグは申し訳程度の試合数しか組まれておらず、実質機能していないに等しい。これでは、選手の成長を促すことは難しい。

 結果、Jクラブの新人補強は大卒に頼る傾向が強まっている。いわば、大学に“期限付き移籍”させ、実戦で鍛えてもらうわけである。今年も渡邉千真(横浜)が開幕戦からゴールを決めたように、近年、大卒ルーキーの活躍が目立つことは、選手育成の現状を、そしてJリーグが抱える問題点を端的に示している。

 選手育成という観点に立てば、大迫や原口以上に注目すべきは、山本真希(清水)のような事例だ。

清水の山本真希選手にJリーグ発展のヒントを見た

 山本が3年目までに出場したリーグ戦は、計5試合に過ぎない。しかし、4年目の昨年11試合に出場すると、5年目の今年ついにレギュラーに定着。開幕戦から先発出場を続けている(6節終了時)。

 5年目ということは、大卒ルーキーの1年目と年齢的には同じである。ところが、現実にはこの程度の実績しか残せず、同じクラブで4、5年目を迎えられる選手は少ない。

 公式戦にほとんど出場できずに、クビになる不幸なケースを避けるためにも、大学を最大限に活用する。確かに、賢明な一手かもしれない。

 しかし、山本のような選手がコンスタントに輩出されなければ、Jリーグの選手育成が本来の機能を果たしているとは言えないのではないか。

 規格外のスーパールーキーたちよりも、ようやく花開いた遅咲きのボランチにこそ、未来へのヒントは隠されているように思う。

■関連リンク► 大型ルーキー・大迫勇也の成長は長い目で見守るべき。
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