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なぜラリーで事故を起こしたのか?
クビサの惨事でF1界の問題が露呈。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2011/02/09 10:30

なぜラリーで事故を起こしたのか?クビサの惨事でF1界の問題が露呈。<Number Web> photograph by Getty Images

1月31日にはロータス・ルノーの新型車R31のお披露目パーティに出席したばかりだったロバート・クビサ。次代のF1王者としても期待されていたのだが……

 事故は2月6日の日曜日、イタリアで起きた。

「ラリー・ロンデ・ディ・アンドラ(Rally Ronde di Andora)」のスーパー2000クラスに出場していたロバート・クビサが駆るシュコダ社(チェコの自動車メーカー)製のマシン「ファビア」がコントロールを失って高速のままクラッシュしたのだ。幸い命に別状はなかったというが、右腕と右脚が複数箇所骨折していただけでなく、前腕が重度の損傷を受けるという極めて深刻な状態で、病院にヘリコプターで救急搬送されることとなった。

 7時間にもおよぶ外科手術を受けたクビサの右手は、切断という最悪の結果は回避されたものの、依然として予断を許さない状態が続いているという。それは、イタリア・サボナにあるサン・パオロ病院で手の外科手術を専門に行っているマリオ・イゴール・ロッセロ教授の次のような言葉からもうかがい知ることができる。

「われわれにとって、それは重要な任務であったが、同時に非常に困難な手術でもあった。ロバートの右前腕には2カ所切創があり、それは骨と腱にもダメージを与えるほどの酷い損傷だった。そのため、われわれ医師団はその前腕の機能を再生させることを最優先にあらゆる手を尽くした。

 手術は7人の医師が2チームに分かれ、7時間を要した。一方のチームは、このような損傷に対しての手術経験が豊富なわれわれサン・パオロ病院の救急対応チームである。そして、もう一方のチームはクビサが運ばれたサンタ・コロナ病院の整形外科部門の医師たちだ。

 手術によって、損傷が激しかったロバートの手は血管が縫合され、血が通うようになって、血色が改善されている。しかし、依然として重体であることは変わりなく、術後も24時間体制での看護が必要な状態にある」

開幕戦絶望では済まない? ドライバー生命の危機も。

 地元紙が伝えたところによると、クビサの右手は再生手術を受けて切断は取り留めたものの、血管が正常に機能していけるかどうかは不明で、術後1週間が山場となるという。さらに、たとえ血管が機能したとしても、神経が回復するかどうかは依然不透明でもあり、3月11日から開幕するバーレーンGPへの出場が絶望となっただけでなく、今シーズン中の復帰も危ぶまれている、というのだ。

 クビサは2月上旬にスペイン・バレンシアで行われたF1の合同テストにも参加。

 最終日となった2月3日にはトップタイムをマークしてテストを成功裡に締めくくった現役の中でもトップクラスのF1ドライバーである。そのF1ドライバーがなぜテストからわずか3日後に、ラリーで事故に遭遇しなければならなかったのか。

 惨事に至った理由は2つあると考えられる。

 ひとつは、クビサが無類のレース好きで、特に危険とされるラリーカーのドライブを好んでいたことだ。

【次ページ】 F1とラリーとカートの運転が趣味の全てだったクビサ。

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ロバート・クビサ

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