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ライバルなのか、友なのか……。
谷繁元信と佐伯貴弘が語る1998。
posted2018/03/31 09:00
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Kanekoyama
2人の間に漂う距離感は変わっていなかった。
春の気配が漂う3月某日、横浜市内。谷繁元信と佐伯貴弘が同じ部屋で顔を合わせた。
握手するわけでも、抱擁するわけでもない。お互いにピリッとスパイスを効かせた軽口を浴びせながら、並び立つ。対談に先立って行われた撮影の合間、カメラマンが「もっとお互いに近寄ってほしいんですが」とリクエストすると、すかさず「気持ち悪いよ」と、強面でツッコミを入れる。それでいて、表情は同じフレームに収まる嬉しさを隠しきれていない。
47歳、中年男2人。
ブラックでスパイシーな緊張感を保ったまま、対談は進んでいった。
「こんなに練習している40歳っているかな?」
はじめて2人の関係を知ったのは2010年のことだった。
2月、沖縄キャンプのある日、中日ドラゴンズの正捕手・谷繁は海風の吹き抜ける北谷球場のグラウンドを走っていた。ほぼ若手と同じメニューをこなした40歳(当時)は汗だくの顔で笑いかけてきた。
「なあ、こんなに練習している40歳っているかな?」
うーん、と12球団のベテラン勢を思い浮かべながら頭をめぐらせていると、谷繁が急に真顔になって言った。
「いる……。いるわ。佐伯がいた……」
横浜ベイスターズを戦力外となった佐伯はその年から中日に移籍しており、キャンプは二軍の読谷球場からスタートしていた。
翌日、さとうきび畑に囲まれた球場を訪れ、佐伯に近づいてみた。
「へえ。シゲがそんなことを……」
ニコリともせず、初対面の筆者をジロリと見下ろした。
「で、あいつはどれくらいやってんの?」