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メダルを逃したことで気づけた真実。
竹内智香「オリンピックの価値って」
posted2018/03/03 08:00
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
メダリストに湧く日本列島。平昌五輪に盛り上がった国民は、その熱が冷めていくのを惜しむかのように、連日話題にし続けている。
一方、アスリートたちは休む暇もなく、次なる戦いに向けてスタートを切っている。日本選手団の解団式があった翌日には、スピードスケートの小平奈緒や高木美帆も試合のために離日した。季節はウィンタースポーツシーズンの佳境へと入っていく。各競技とも、まだまだ忙しなく稼働する。
金メダルだけを見据えた4年。その戦いを終えた竹内智香は、いつもの笑顔で羽田空港のカフェにいた。彼女もまた、すぐに始まるレースに向けて、数時間後には機上の人になる。
前回のソチ五輪、スノーボード女子パラレル大回転で銀メダリストに輝いたが、2位で終わったその瞬間から、彼女の平昌五輪への勝負は始まった。
平昌での結果は、5位。頂点はおろか、表彰台にも登壇できなかった。彼女からは、金メダルへの思いの強さ、真っ直ぐさがひしひしと伝わってきていた。だからこそ、達成できなかったいま、いったいどんな感情が心を占めているのか。笑顔に出会うまでは、脱力感や虚無感といった、燃え尽きた姿も頭を過ぎっていた。
「負けた日の夜も焼肉を食べに行って」
「このカレー、食べていいですか?」
皿からはみ出るような大きなナンが乗ったインドカレーを注文し、モグモグと食べていく。こちらの話にゲラゲラと笑っては、時に舌鋒鋭いトークを展開していく。いつもの竹内がそこにいた。
「負けた日の夜もみんなで焼肉を食べに行って、お酒も飲みました。ワーワー騒いで。自分でもどんな感情になるのかと思っていたけど、結構スッキリしていたんです」
昨年末、そして1月と、コンディションは最悪レベルを辿っていた。
「20年の競技人生で、こんなに調子が悪かったことがないぐらい。よりによってどうして金メダルを目指したこの五輪直前になってしまうんだろうって。でも、起きたことは全部必然と思ってきた。だから後悔はまったくないです」
今シーズンのレースでは二桁順位や予選敗退が続いた。だとすれば、本番の五輪で5位にまで食い込んだこと自体、大善戦だったことは事実。こんな話は何の気休めにもならないだろうが、意外と竹内自身もそこは自分を褒めたのだった。