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湘南国際を運営の坂本雄次さんに聞く、
「選ばれる市民マラソン」の作り方。

posted2017/12/18 08:00

 
湘南国際を運営の坂本雄次さんに聞く、「選ばれる市民マラソン」の作り方。<Number Web> photograph by SHONAN INTERNATIONAL MARATHON

大会のゴール付近の様子。広々としたエリアが確保されており、参加した選手たちをサポートする施設、スタッフも充実していることが分かる。

text by

柳橋閑

柳橋閑Kan Yanagibashi

PROFILE

photograph by

SHONAN INTERNATIONAL MARATHON

日本でも有数の人気を誇る「湘南国際マラソン」。
大会に参加したジャーナリストが、ひとりの市民ランナーとして感じた
「この大会の不思議な魅力はどこから来るのだろう?」という疑問。
そこで、大会を運営する坂本雄次さん(ランナーズ・ウェルネス)に、
大会を始めたきっかけや、運営の大変さを大いに語っていただいた。

 湘南国際マラソンの帰り道、仲間と話していて、自然に「また来年も出よう」という話になった。同じ時期に行われている大会で興味を惹かれるレースもなくはない。でも、やっぱり湘南に戻ってきてしまう。自分も含めて、なぜこの大会にはリピーターが多いのだろう? 

 ランナーとしての興味に、ライターとしての好奇心も加わり、レースの3日後、再び大磯へ向かった。訪ねた先は、湘南国際をはじめ数々の人気大会の企画・運営を手がける「ランナーズ・ウェルネス」。24年前にこの会社を立ち上げたのが、「24時間テレビ」のチャリティーマラソンのトレーナーとしても有名な坂本雄次さんだ。

 坂本さんの経歴は一風変わっている。もともとは東京電力で変電所のメンテナンスを担当する一介のサラリーマンだった。陸上の競技経験はなく、ランニングを始めたのは30歳のとき。最初はダイエットと健康維持が目的だった。

 ところが、走り始めると、みるみるランニングの世界にのめり込む。自らレースに出る傍ら、社内対抗駅伝に出場するチームの監督を務め、指導法や身体のケアについて学び、トレーナーとしての技術を習得していく。

 転機となったのは1990年。間寛平さんと出会ったことだった。世界一苛酷とも言われるウルトラマラソン「スパルタスロン」(アテネからスパルタまでの約245kmを36時間で走る)に挑戦する寛平さんのサポートをすることになったのだ。寛平さんはそれから2年目にスパルタスロンを見事完走。それが縁となって、坂本さんは「24時間テレビ」のマラソン指導もするようになっていく。

 スパルタスロンは、走るランナーはもとより、トレーナーにとっても究極のチャレンジ。寛平さんを献身的にサポートする中で、坂本さんはサラリーマン生活との両立に限界を覚え、ランニングを人生の仕事として選ぶことを決断する。現在のようなマラソンブームが起こるはるか前、1993年のことだった。

 そんな坂本雄次さんに、じっくりと湘南国際マラソンについて話を聞いてみることにした。

マラソン大会を作ることは仕事になるのか?

「私がランナーズ・ウェルネスを設立したときは、いまと違って、東京マラソンのような大規模レースはまだありませんでした。市民マラソンの大会を企画・運営する仕事が成り立つなんて、誰も考えなかった時代です。

 東京電力を退職して、かみさんと2人で事務所を立ち上げたんですが、1年で退職金は底をつきました。テレビの仕事を請けおって糊口をしのいだ時期もありましたけど、私は何とかなると思っていたんです。

 というのも、寛平さんを通じていろんなマラソンの大会に関わるようになって、ランニングというスポーツの間口の広さ、奥の深さをあらためて実感していたからです。

 私なりの根拠もありました。ひとつには、ちょうどそのころ少子高齢化が問題になり始めていたことです。高齢化社会になっていくとき何が大切かといったら、やはり健康の問題です。ウォーキングやジョギングのような生涯スポーツが普及すれば、歳をとっても多くの人が健康を維持できる。そうすれば国全体の医療費も抑えることができます。

 もうひとつは地方分権化の動きです。『これからは中央の権限を地方に移すから、自治体は自分たちの力でがんばってくれ』ということになれば、何か活性化の起爆剤が必要になる。その流れにマラソン大会はフィットするんじゃないか。

 そのふたつが、私がものを考えるときの拠りどころでした。市民マラソンは社会の役に立つし、やがては世の中に定着していくに違いない──その一念です。事業として採算がとれるかどうかまでは、正直考えていませんでした」

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